第10話 幼馴染は頼れる聖剣士

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第10話 幼馴染は頼れる聖剣士

リュカは息を整えながら 背中にソウルブレイドを収めた。 リュカの体には戦いの疲労が重くのしかかっており 先ほどの『エクリプス・ノヴァ』の使用でMPを完全に使い果たしていた。 今やリュカの最大スキルで あるその技は使えない。 それでも目の前には 強大なリーダーゴブリンとその手下である8体の ネクロゴブリンが立ちはだかっていた。 「まずいな……この状態でどう戦えば……」 リュカは焦りを感じながらも剣に手を置き 心を落ち着かせようとする。 そんなリュカを見て エリナが一歩前に出た。 「リュカ あのリーダー格は私がやるわ あなたは残りの8体をお願い!」 エリナの声には強い決意が込められていた。 エリナはセレスティアルブレイドを輝かせ リーダーゴブリンに向かって進み出す。 リュカは驚きつつも その言葉に胸を打たれた。 (エリナがゴブリンのリーダーを……) エリナが戦いを引き受けてくれることが リュカにとってとても頼もしく感じられた。 幼馴染であり 共に多くの戦いをくぐり抜けてきたエリナの強さは まさに聖剣士の名にふさわしいものだった。 「分かった、エリナ 8体のゴブリンは俺に任せろ!」 リュカは気合を入れ 剣を握り直す。 リュカは再び前へと進み出した。 8体のネクロゴブリンが不気味な唸り声を 上げながらリュカに襲いかかってくる。 その死霊の力で強化されたゴブリンたちは 素早い動きで一斉にリュカを囲もうとしていた。 しかし リュカはその動きを冷静に見極め 素早く反撃に転じた。 「これ以上 近づかせるものか!」 リュカは全力で剣を振り 1体目のゴブリンを斬り裂く。 血が飛び散り ゴブリンの体が地面に崩れ落ちた。 しかし すぐに次のゴブリンが襲いかかってくる。 「見切っている!」 リュカは回り込むようにして2体目を倒し その勢いで3体目にも斬撃を放つ。 だが、体力の限界が近づいているのを感じていた。 連続した攻撃で腕が重くなり 息も荒くなっていく。 「くそっ、きついな……」 リュカは焦る気持ちを抑え 周囲のゴブリンたちをにらんだ。 やつらは油断せず リュカの隙を見つけようと狙っている。 一方で、エリナはリーダーゴブリンとの 対峙を始めていた。 巨大な斧を振りかざし リーダーゴブリンは力任せに エリナに攻撃を仕掛ける。 しかし エリナはその巨体に怯むことなく 素早い動きで斧をかわし 反撃の準備を整えていた。 「聖剣士エリナとして この戦いを終わらせる!」 エリナは剣に光を宿し 一気にリーダーゴブリンに切りかかった。 愛刀『セレスティアルブレイド』が神聖な光を放ち ゴブリンの体を深く斬り裂く。 その瞬間 リュカもまた一体 また一体とゴブリンを倒し続けていた。 腕の痛みと疲労を感じながらも リュカは残りのゴブリンを相手に奮闘していた。 (リーダーを倒せば、この戦いは終わる……! 頼む、エリナ!) リュカはエリナの戦いぶりを 横目で見ながら 心の中で強く祈った。 ゴブリンたちはすでに半数以上が倒され 残りの数は3体にまで減っていた。 しかし リュカの体力は限界に 近づいていた。 ゴブリンたちはその隙をつき リュカに向かって同時に攻撃を仕掛ける。 その瞬間 リュカは咄嗟に 両手に装備している盾 『シールドオブライト』で ゴブリンの攻撃を防いだ。 「この盾、相当硬いんだぜ……!」 リュカは最後の力を振り絞り シールドで防いだ直後 残りのゴブリンに反撃を開始した。 次々と斬りかかり 最後の一体を倒した時 リュカは膝をつき 肩で息をした。 「終わった……」 リュカはそう呟いたが 視線を前方に向けた。 エリナがリーダーゴブリンとの戦いを 続けているのが見えた。 「エリナ!」 疲労が限界に達していたが リュカはそれでも全力で エリナに向かって駆け寄った。 エリナはリーダーゴブリンの攻撃を 何度もかわしながら 徐々に相手の動きを読み 決定的な一撃のタイミングを狙っていた。 そして ついにその瞬間が訪れる。 エリナはリーダーゴブリンの隙を見逃さず 愛刀『セレスティアルブレイド』を振り下ろした。 「であああぁーーーーっ!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッドドドド!!!!! 神聖な光がリーダーゴブリンの胸を貫き その巨体が崩れ落ちた。 戦いが終わり リュカは疲れた体を引きずりながら エリナの元へ駆け寄った。 「やったな、エリナ…… 本当に頼もしかったよ」 エリナは微笑みながら頷いた。 「リュカもあんなに疲れていたのに 8体ものゴブリンを見事に倒したわ さすがね」 二人はお互いを見つめ合い 戦いを共に乗り越えた喜びと絆を再確認する。
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