第3話 幼馴染の前に立ちはだかる闇の騎士団

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第3話 幼馴染の前に立ちはだかる闇の騎士団

エリナは剣をしっかりと握りしめ 震える手を抑えようとした。 エリナもまた 目の前の敵がただならぬ存在で あることを理解していた。 「こうして見ると美しい顔だな 聖剣士エリナよ いいだろう 顔だけ切り取って持ち帰るとしよう」 ゼファーは冷酷な笑みを浮かべた。 次の瞬間 ゼファーの体が闇の中に溶け込み 姿を消した。 その動きにエリナは瞬時に反応するも ゼファーの姿はすでにエリナの背後にあった。 「!」 闇の力を(まと)った剣が エリナの背中に向かって振り下ろされる。 『闇刃一閃(やみじんいっせん)』 エリナはゼファーの一閃を剣で何とか受け流したが すぐに反撃に転じる間もなく ーーーーーーーーッドン!!!!!! ゼファーの拳がエリナの隙だらけの お腹に深くめり込んだ。 「ぐっ…!」 激痛が走り エリナは息を詰まらせた。 エリナの体は反射的に前屈みになり その場で膝をつく。 「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」 両手でお腹を押さえながら 苦しそうに咳き込む。 立ち上がろうとしたが 体が言うことを聞かず そのまま倒れ込んでしまった。 目の前が霞み ゼファーが冷酷な笑みを浮かべながら剣を 振り上げるのが見えた。 エリナは (殺される……) そう思った瞬間だった。 「エリナ!」 リュカの叫びが響き渡り ゼファーの隙を突いて飛びかかった。 リュカの剣『ソウルブレイド』がゼファーに 向かって振り下ろされる。 ゼファーはリュカの存在に気付き ギリギリのところで後退してその攻撃を避けると 冷笑を浮かべた。 「何だ、お前は…?」 「よくもエリナをっ!」 リュカはゼファーを睨みつけた。 リュカは再び剣を構え ゼファーに向けて猛然と斬りかかった。 ゼファーも一瞬の躊躇(ちゅうちょ)もなく 闇の剣を振るって応戦する。 金属がぶつかり合う鋭い音が山奥に響き渡り 二人の激しい戦いが始まった。 ゼファーの動きは異様に速く 闇のエネルギーをまとった剣は一瞬でリュカに迫る。 しかし リュカもまた 一歩も引かずに剣を振り下ろし ゼファーの攻撃を正面から受け止めた。 「お前……ただの人間じゃないな?」 ゼファーは眉をひそめた。 「俺は勇者のリュカだ! この場でお前を成敗してくれる!」 リュカの叫びと共に 剣から放たれる一撃は強力だった。 だが ゼファーは『闇影瞬歩(あんえいしゅんぽ)』を使い 瞬時にリュカの背後に回り込んだ。 その攻撃をリュカは紙一重で回避するが その動きの速さに冷や汗がにじむ。 「リュカ…」 エリナがうつむいたまま 苦しそうにリュカの名前を呼んだ。 エリナがまだ倒れたままであることに気付き リュカの胸に焦りが広がる。 「俺が守らなきゃ…」 リュカは再び剣を強く握りしめた。 (だが、このままでは勝てない…… 『エクリプス・ノヴァ』を使うしかない!) リュカの頭の片隅には 『エクリプス・ノヴァ』を使えば 闇の力ゆえに魔族のスキルが エリナを怖がらせてしまうかもしれないという 不安がよぎっていた。 しかし その不安をかき消すように リュカの心には 『何としてでもエリナを守る』 という強い決意が生まれ 体中に力がみなぎっていくのを感じた。 リュカはスキル発動の構えに入った。 体内に眠る力を解放し、最大のスキル―― 『エクリプス・ノヴァ』 を発動する。 暗黒の太陽が彼の剣先に現れ 周囲の空間を歪ませるほどの 強烈なエネルギーが渦巻く。 「くらえ!」
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