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第71話 最後の砦、勇者と覇王の対峙
リュカたちは
魔王軍が恐るべき勢いで人間界の王国を
次々に占領していく様子に心を痛めながら
緊張感を抱いてヴァルハイム王国に到着した。
人間界の四大王国のうち
アステリア王国、ノクティア王国
そしてリュカたちが守るルーンフェル王国までもが
すでに魔王軍の支配下に置かれてしまっていた。
残るはヴァルハイム王国
これが人間界にとって最後の砦だった。
ヴァルハイム王国は
アステリア王国が陥落した際に多くの難民を受け入れ
今も人々の希望を守る王国として存在している。
リュカたちが到着すると
リュート国王が迎えに出てくれた。
リュート国王の表情には深い疲労の影が見えたが
それでも気丈に振る舞い
リュカたちを歓迎した。
「あなたたちが来てくれたことは
我々にとってとても頼もしいことだ」
とリュート王は感謝を込めて言った。
「ヴァルハイム王国の民も
勇者パーティが共に戦うと知れば
必ず勇気を持てるだろう」
リュカは王の言葉に深く頷き
リュート王に敬意を示しつつ
心の中で決意を新たにした。
「最後の砦……この王国を守り抜くことで
人間界の未来を守るんだ」
そして
日々防衛体制を整えつつ
魔王軍の襲来に備える日々が続いた。
勇者パーティも住民たちを避難させ
戦いに備えながら
ヴァルハイムの兵士たちと共に防衛の準備を進めていく。
それから10日後
ついにその時がやってきた。
空が不気味に揺れ
大地が激しく震え始めた。
王国を守る強固な城壁が突如として崩れ
地面に大きな亀裂が走った。
大地を操る覇王騎士団
アリアの『地震魔法』
による破壊だ。
巨大な岩が地面から突き出し
兵士たちは混乱に陥っていた。
リュカとエリナ
そしてガレスやリカルド
カトリーヌといった勇者パーティの面々はただちに現場へと駆けつけ
破壊された城壁の向こうを睨みつけた。
城壁の向こう側には
覇王騎士団の団長ブラッドハートを先頭に
六人の精鋭メンバーが整然と並んでいた。
リュカはその圧倒的な威圧感に
緊張感が一層強まるのを感じた。
相手は人間界の脅威
覇王騎士団。
彼らが揃い踏みでこの地に現れたということは
まさに決戦の火蓋が切って落とされることを意味していた。
炎属性の団長ブラッドハートは
燃え盛る剣を手に
威風堂々とした佇まいでリュカたちを見据えていた。
その顔には熱い情熱と騎士道を貫く誇りが浮かんでいる。
「ついにこの時が来たか……!」
リュカが剣を握りしめると
エリナもリュカの隣に立ち
リュカの横顔を一瞬見つめた後
力強く頷いた。
その隣には
地の力を操る巨体の覇王騎士団
アリアが
不気味な笑みを浮かべながら立っている。
アリアの巨大な手は
大地を砕き
その力を武器とするために待機しているようだった。
その堂々たる体格と大地を操る力は
まさに圧巻で
兵士たちはアリアの存在感に言葉を失っていた。
その他に4人!
レヴィアタンは静かに佇み、膨大な水の魔力を放つ。
セレスティアは光を放ち、仲間を癒して士気を高める。
メテオは前方に立ち、重力を操る宇宙の力を示す。
アビスは冷徹な眼差しでリュカたちを睨む。
リュカは
これほどまでに強大な相手を前にしても
臆することなく
剣をしっかりと握りしめた。
エリナもその隣で剣を構え
勇者パーティ全員がそれぞれの武器を手に
互いに力強く頷き合った。
ブラッドハートは険しい顔でリュカたちを見据え
炎の剣を掲げて宣言した。
「我ら覇王騎士団はここに集結した!人間界の希望を打ち砕き
この地を我らの支配下に置くために!」
リュカは鋭い目つきで応じた。
「お前たちの好きにはさせない
このヴァルハイム王国は
人間界最後の砦だ……
ここで俺たちが必ず止める」
エリナも冷静に構え
言葉を続けた。
「あなた達には
絶対に屈しない」
両者が睨み合い
互いに相手の気迫を感じ取っていた。
緊迫した空気が場を包み
周囲に漂う湯気のように見えない力が
ぶつかり合っているかのようだった。
激戦を前に
勇者パーティと覇王騎士団が睨み合う中
嵐のような静寂が訪れ
次の瞬間に激突するであろう戦いの幕が開かれようとしていた。
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