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第73話 勇者の号令
ブラッドハートはリュカと
互角の戦いを繰り広げながら
薄く笑みを浮かべた。
「お前はそれなりに戦えているようだが……
他の仲間たちはひどい有様だな
かろうじて聖剣士エリナが戦えているところか?」
その言葉にリュカの表情が
一瞬だけ険しくなる。
視線を巡らせると
仲間たちはそれぞれの敵に
追い詰められていた。
エリナはアリアとの戦いで苦戦していた。
アリアは大地の力を操り
巨大な岩をぶつけながらエリナを翻弄している。
エリナは素早く動き回りながら攻撃をかわしてはいるものの
時折大地の衝撃に足を取られ
攻撃を繰り出す機会を奪われていた。
カトリーヌはレヴィアタンの
水の魔法に苦しめられていた。
レヴィアタンの水の刃が幾重にも連続して襲いかかり
カトリーヌの炎の魔法で防いでも
勢いを抑えることができない。
カトリーヌは魔法の防御を張りながらも
じわじわと体力が削られていった。
リカルドは遠くから弓を構え
隙を狙って攻撃を試みていたが
光属性のセレスティアが放つ光の盾に
弓矢を阻まれていた。
一方
ガレスはメテオの重力操作によって動きを封じられ
次々と降り注ぐ隕石に防戦一方だった。
その惨状を見たリュカは冷静に戦況を把握し
仲間たちに強い声で指示を飛ばした。
「みんな、俺を中心に集まってくれ!」
仲間たちはリュカの指示を受け
それぞれの敵との戦いから一時的に身を引き
彼のもとに駆け寄った。
リュカが力強い言葉で続ける。
「相手は確かに強力だが
俺たちが一致団結すれば
勝機はある」
「はい!」
と勇者パーティの面々は
互いに頷き合いながらリュカの言葉に力を得た。
リュカは戦略を手早く説明し
仲間たちに役割を指示した。
「俺が先頭に立ち
あいつらに高速剣撃で突撃する!
エリナとガレスは
俺のすぐ背後で援護してくれ
リカルドとカトリーヌは後方支援を頼む」
仲間たちがそれぞれの位置に準備し
緊張感が高まる中
リュカは覇王騎士団の
集団へと突撃を開始した。
リュカの突進を見たブラッドハートは
笑いながら小馬鹿にするように叫ぶ。
「リュカが突撃だと? 一人で全員相手にするつもりか?
無謀なことだ」
しかし
リュカの剣は通常の速さを超え
目にも止まらぬ高速で閃いていた。
剣を振り下ろすたびに
ブラッドハートをはじめとする覇王騎士団の
全員が
防御に回らざるを得なくなり
余裕の表情が少しずつ消えていく。
リュカの高速剣撃はあまりにも速く
誰もが防御に徹するしかなく
攻撃の隙を見い出せない状況に追い込まれた。
その刹那
リュカの背後からエリナとガレスが
二人の剣を振りかざし
リュカの剣撃に合わせて絶妙なタイミングで
援護の攻撃を繰り出した。
エリナの聖剣が輝き
ガレスの剣が重厚な一撃を加えることで
覇王騎士団の
陣形が崩れていく。
リュカ、エリナ
ガレスの三人の連携攻撃が
圧倒的な勢いで覇王騎士団を
追い詰めていく中
後方からリカルドの矢が飛び
カトリーヌの炎の魔法が援護射撃として加わった。
遠距離からの支援が絶妙なタイミングで覇王騎士団に
降り注ぎ
さらなる混乱を巻き起こす。
ブラッドハートは事態の深刻さを悟り
怒りを込めて叫んだ。
「一箇所に固まるな!
全員、散れ!
このままでは一網打尽にされる!」
ブラッドハートの号令により
覇王騎士団の
メンバーが一斉にバラバラに散り
リュカの剣撃から逃れようとした。
だが、リュカの巧みな剣術により
覇王騎士団は散開するどころか
逆に一箇所へと追い詰められていった。
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