第74話 覇王の終焉

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第74話 覇王の終焉

リュカの剣が(ひらめ)覇王騎士団(はおうきしだん)の メンバーを次々と追い詰めていった。 戦場の中心でリュカの剣が舞うたび 覇王騎士団(はおうきしだん)の精鋭たちは守勢に回り 退避する隙すら与えられずに 一箇所へと追い詰められていく。 ブラッドハートは激昂(げきこう)し 炎を(まと)わせた剣を力任せに振り下ろし リュカの頭上を狙った。 「死ね、リュカ!」 しかし! ーーーーーーーーーーーーーーーーッズズズ!!!!!!!! その一瞬の隙を見逃すはずもなく リュカの剣は鋭い音と共に ブラッドハートの腕を斬り落とした! 「これは 以前お前がエリナにしたことへの償いだ」 リュカの声には冷たく鋭い怒りが込められていた。 かつてエリナがブラッドハートに右腕を斬り落とされ 深く傷つけられたその記憶が脳裏に蘇り リュカは仲間への無念をここで晴らしたのだった。 その姿を見たエリナは 胸の奥にこみ上げる想いに心を揺さぶられる。 (リュカ……) ブラッドハートは苦痛に顔を歪めながらも怒りを露わにし 左手に火炎の魔力を集めていった。 「貴様、よくもこの俺に…!」 その姿を冷ややかな目で見据えたリュカは 自らの最大スキルである 『エクリプス・ノヴァ』 を発動する準備を始めた。 闇の魔力がリュカの周囲に渦巻き 圧倒的なエネルギーが空間を震わせる。 「全員、まとめて始末してやる!」 リュカの声が響き渡り 覇王騎士団(はおうきしだん)の面々に緊張が走る。 ブラッドハートはその圧倒的な魔力に怯え 慌てて叫んだ。 「ま、待て! 話をしよう、リュカ!」 だが、リュカは迷いなく『エクリプス・ノヴァ』を発動させた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!! 膨大なエネルギーが爆発的に解き放たれ 轟音が戦場を包み込む。 黒い光が閃き 覇王騎士団(はおうきしだん)のメンバーを飲み込んだ。 その一撃をまともに受けた覇王騎士団(はおうきしだん)は 次々に打ち砕かれ 轟音と共に体がバラバラに散っていく。 エクリプス・ノヴァの爆発が収まった後 戦場には惨状が広がっていた。 ブラッドハート以外の5人の団員たちは 完全に消滅し、跡形も残らない。 唯一生き残ったブラッドハートも 全身が重傷を負い 上半身だけが辛うじて残っていた。 ブラッドハートは瀕死の体で最後の力を振り絞り ポケットから緊急用のテレポートアイテムを取り出した。 「俺はまだ終わらん… ここから退くことで 次に必ず…」 ブラッドハートはアイテムを握り 戦場から逃れるべく発動させた。 しかし 空中へと飛び立ったその瞬間 ブラッドハートの背中に冷たい刃が突き刺さった。 鋭い痛みと共に振り返ると そこには魔王ルシファードの冷徹な瞳が光っていた。 「ま…魔王ルシファード様 なぜ…?」 ブラッドハートは必死に問いかけるが 魔王の表情には冷淡な怒りが浮かんでいる。 「敵前逃亡は死罪だ …お前は失敗し この地を汚した」 魔王は無情にもブラッドハートにとどめを刺し 刃が引き抜かれると同時にブラッドハートの体は 跡形もなく消え去った。 魔王ルシファードは無言でリュカのいる地上を見下ろし その鋭い眼差しは怒りに満ちていた。 リュカもその視線に気づき 真っ直ぐに見上げた。
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