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第75話 絶望の闇、魔王の真の力
魔王ルシファードは
ヴァルハイム王国の城壁が崩れ去った戦場に
冷徹な視線を投げかけ
ゆっくりと地上に降り立った。
戦場の静けさを破るように
魔王の圧倒的な存在感が周囲に広がり
勇者パーティの全員に冷たい恐怖がじわりと染み込んでいく。
「このヴァルハイム王国の崩壊……これは
私が必ず成功させねばならぬものだ」
魔王ルシファードは低く重い声で言い放った。
その目はリュカを捉えたまま
さらに言葉を続ける。
「これを成し遂げることで
人類を滅ぼす道がさらに容易くなるのだ。
お前たちがどれほど抗おうと
滅びの運命は揺るがぬ」
リュカはその言葉に嫌悪感を覚え
眉をひそめた。
「言っていることが邪悪そのものだ
……さすが、魔王様のお言葉は違う」
その皮肉に
魔王ルシファードは冷たい笑みを浮かべることなく
真剣な眼差しをリュカに向けた。
「人間どもが……貴様たちに生きる資格などない。
無知で愚かで
自らの醜い欲望でこの世界を汚す……人類は滅びるべき存在だ」
その言葉には
迷いのない絶対的な信念が込められていた。
リュカは思わず息を呑み
視線を逸らさずに魔王ルシファードを見据えたが
内心では不気味な寒気が背筋を駆け上がっていた。
その時
魔王ルシファードの全身が微かに輝き始めた。
黒い光の粒が彼の体を包み込み
次第にその光が増幅していく。
周囲の空気が重く変わり
恐怖のような圧力が辺りに広がっていった。
勇者パーティの面々はその場に立ち尽くし
リュカでさえも強烈な魔力の波動に一瞬動きを止められた。
「見せてやろう
貴様たちに真の力というものを……」
魔王ルシファードは静かに右手を掲げ
空に向けて指を伸ばした。
その手から禍々しい黒い炎が立ち上がり
瞬く間に空を覆い尽くすほどの規模に広がった。
その圧倒的な黒炎が空全体を覆い
闇が戦場全体を飲み込んでいく。
「くっ……なんという力だ……!」
エリナが息を呑み
普段冷静な表情を崩し
動揺を隠せない様子で呟いた。
「これが……これが魔王の本気の力だというのか……」
リカルドも手にしていた弓を下ろし
全身から冷や汗が流れるのを感じていた。
魔王ルシファードはその漆黒の炎の中に浮かび上がり
両の手に闇の力を集中させる。
その様子はまるで
人間の想像を超えた恐怖そのものであり
勇者パーティ全員がその光景に戦慄を覚えた。
魔王ルシファードがふとリュカを見下ろし
再び冷たく言葉を放った。
「この力の前に
貴様たちの小さな抵抗など無意味だ。
私の意思は絶対だ。
貴様ら人間がどれだけ集おうと
足掻こうと
この運命は変わらぬ」
リュカはその威圧的な言葉に耐えつつも
決して目を逸らさなかった。
「……俺たちは運命を変えるためにここにいる
だから今日、お前を倒す」
魔王ルシファードはその言葉に
冷ややかな笑みを浮かべ
さらに黒い闇の炎を激しく燃え上がらせた。
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