第9話 幼馴染、決死の覚悟

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第9話 幼馴染、決死の覚悟

リュカは瞬時に悟った。 ゴブリンたちを操り 魔王がエリナを抹殺しようとしているのだ。 (こいつら、間違いなくエリナを狙っている…!) リュカは手元の『ソウルブレイド』に意識を集中し その剣に秘められた『闇龍の刻印』 を解放しようとした。 『エクリプス・ノヴァ』 「リュカ……」 エリナが何かを言いかけたが その瞬間 リュカの剣から強大な闇のエネルギーが噴き出した。 暗黒の太陽が剣先に現れ その周囲の空気が歪むほどの力が溢れ出す。 (一気に終わらせる……!) リュカは力強く叫び 剣を振り下ろした。 「消えろ、悪魔どもっ!」 リュカの声と共に 闇のエネルギーが爆発的に広がり 周囲のゴブリンたちを一瞬で飲み込んでいく。 ゴブリンたちは声も出せず ただその場で消え去っていった。 静寂が戻った。 リュカは大きく息を吐き 剣を収めたが その表情には疲れが色濃く出ている。 「エリナ、無事か?」 リュカはエリナに声をかけた。 すると エリナは少し涙ぐんで リュカのそばに駆け寄り その腕を支える。 「リュカ 本当にありがとう もしもの時のことを考えて 私のために体に負担をかけてまで あのスキルを使ってくれたんだね……」 リュカは苦笑いを浮かべ 肩をすくめた。 「手強い相手だったからね 確実に仕留める必要があったんだ」 エリナは少しの間 無言で彼を見つめた後 柔らかく微笑んだ。 「本当にありがとう あなたがいなければ 私、確実に死んでいた……」 「そんなのお互い様だよ」 リュカはそう言うと エリナに感謝の視線を送る。 二人はしばらくその場に立ち尽くし 森の静けさを取り戻した風景を見つめていた。 だが ふとエリナが顔を引き締めた。 「私、絶対に生贄として 連れ去られた人たちを全員助ける 1人も死なせたりしない!」 リュカはその言葉に真剣に頷く。 「そうだな これからが本番だ」 二人は再び歩き出した。 目的地は 捕らえられている生贄たちがいる場所だ。 リュカの体にはまだ戦いの疲労が残っていたが エリナがそばにいることで その疲れを忘れさせてくれるようだった。 森の中を進む二人の前方 霧が薄く立ち込め 先を見通すことができない。 リュカは慎重に剣に手をかけ 周囲の気配に気を配りながら歩き続けた。 「気を抜かないで行こう まだ何かがいるはずだ」 リュカが低く警告した。 エリナも頷き 剣を構え直した。 「うん、そうだね」 その時 遠くの方からかすかな叫び声が聞こえた。 「助けを求める声…… 生贄にされている人たちだ 急ごう!」 リュカは一気に駆け出した。 エリナもその後に続く。 二人が声の方向へ向かって走り続けると 突然、視界が開けた。 そこには 暗い儀式の祭壇があり 生贄として捕らえられた人々が鎖に繋がれていた。 そして その中央に立つのは 恐ろしいまでの威圧感を放つ 巨大な『ネクロゴブリン』のリーダーだった。 「またゴブリンか……今度は強そうだな」 リュカは剣を構え ゆっくりと歩み寄る。 エリナも同じように剣を構え リュカの背中を守るように立った。 エリナは 「リーダー格ね……! あいつを倒さない限り みんなを救うことはできない!」 と警戒した。 リーダーゴブリンは 二人に気づくと狂ったように笑い声を上げ 両手に巨大な斧を振りかざした。 その恐ろしい力に森の木々が揺れ 空気が張り詰める。 「いくぞ、エリナ!」 リュカが声を上げた瞬間 再び二人は戦いの渦へと飛び込んでいった。
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