卒業アルバム

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 俺がリビングに入ると、娘のマナが駆け寄ってきた。 「パパこれよんでー」  マナは胸に抱えていたものを俺に渡す。 「おっ、懐かしいなぁ」  赤い表紙に書かれた『思い出』の金文字――大学時代の卒業アルバムだった。 「マナ、これはいつもの絵本じゃないんだよ」 「ちがうのー?」 「でも昔のパパとママの写真が見れるぞ」 「パパとママの? みたいみたい!」  俺の言葉にマナが飛び跳ねる。無邪気な姿に目を細めていると、 「何を騒いでるの?」  妻が部屋に入ってきた。 「これだよこれ」  卒業アルバムを持ち上げる。妻が目を丸くした。 「懐かしー! どこから出てきたの?」 「それが実は」  視線を妻からマナに移す。 「わたしがみつけたの!」  マナが胸を張った。が、 「こら! さてはまた勝手に物置き部屋に入ったでしょ!」  妻は腰に手を当てマナを叱る。 「……ごめんなさぁい」  マナが小さな体と声を震わした。 「まぁまぁ、せっかくだから三人で卒業アルバムを見ようじゃないか」  俺は妻をなだめ、マナの頭を撫でる。 「みるー!」  マナが顔を輝かせ、 「しょうがないわねぇ」  妻は苦笑いを浮かべた。 「決まりだな」   マナを挟み、俺達三人はソファに横並びで座った。    
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