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天使と悪魔が約束の場所で会った。
「私が天使です。人間で言うところの女です」
「僕が悪魔だ。人間で言うところの男だ」
天使と悪魔はどこかで決着をつけようとしていたのだろうか。
「いつまでも争っていてはいけない。決着をつけようではないか」
「いいですね。ただし暴力は嫌です」
「僕もだ」
「とりあえずここで立ち話もなんですから、歩きながら話し合いましょう」
「そうだな」
季節は初秋。
暑さも和らぎ、過ごしやすい毎日だ。
穏やかな日差しの中、天使と悪魔はお互いの主張をしながら歩く。
最初は距離を置いていたが、そのうち悪魔は天使の手をつかんだ。
「…」
天使の顔に一瞬緊張感が走る。
「すまない、逃げられては困るからな」
「わかったわ。じゃあ私も逃げられては困るので」
天使も悪魔の手を握り返す。
こうして2人は手を繋いで歩き出した。
人間たちが見ると素敵な恋人同士に見えたかもしれない。だがふたりは天使と悪魔だ。壮絶に戦っているはずだ。
「ちょっと疲れたな」
しばらく話しながら歩いたあと、悪魔が呟いた。
「そうね…座りましょうか」
ちょうど近くに公園があったので、そのベンチに天使と悪魔は並んで腰掛けた。
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