あなたのお土産

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 お葬式なんてまだ先だと思っていた。まだ話すことたくさんあったのに。たくさんやりたいこともあったのに。  言わなきゃいけないことも...… あったのに。  息子夫婦、孫、娘が忙しなく動いてくれる。私は夫の使い込まれた文机に寄りかかって頭が真っ白なままだった。  立ててある本も、文房具も整頓されている。引き出しを開けると便箋やらが綺麗に入っていた。  そこに一冊の本が入っていた。  山野草の本だった。私の本とは違う。  立ち上がって自分の本を取りに行き並べてみる。  やはり違う。私はもう一冊あることを知らなかった。  夫の本は少し詳しく書いてある。ページを捲ると几帳面に赤い線がひいてあったり、ちり紙で作ったこよりを栞がわりに挟んだりしてあった。  あの人らしいわ。  少しだけ笑みがこぼれた。
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