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勤め先の清掃会社に依頼があり、独居老人が亡くなった部屋を片付けることになった。
今回の現場責任者である俺が先に部屋に行き、後からパートさんが数名合流する。
そういう流れになっていたのだが、合鍵で部屋に入った途端、いきなり扉が閉まった。
遮光カーテンでも引かれいてるのか、昼間だというのに真っ暗になった部屋。そのあちこちから小さな笑い声が聞こえてきた。
一瞬で湧いた恐怖感。
都さに部屋から出ようとしたが、何故か、直感が『出るな』と訴える。
恐怖を押し潰しながら立ち尽くし、周囲を窺う。すると笑い声は、やがてひそひそとした話声に変わった。
「この人間、動かないね」
「音がしないと居場所が判らないよ」
「でも、明かりをつけられたらおしまいだ」
どうやらこの部屋にいる連中は、暗すぎで俺の居場所が判らないらしい。だが、明るければ明るいで、俺を襲うことはできなくなるようだ。
多分、部屋の明かりのスイッチは近くの壁にある。でもそれをつける前に襲われない保証はない。そもそもろ、そこにスイッチがなかったら? あっても、電灯が切れてるとかの理由で明かりが点かなかったら?
考えれば、いくらでも『明かりが点かない可能性』が浮かんでくる。
ダメだ。動くな。明かりは諦めろ。
申し少し待てば、ここにパートさん達が到着する。鍵はかかっていないから、俺が中にいると思い、扉を開けてくれる筈だ。
このままでそれを待つ。今俺にできるのはそれだけだ。
本当に、いつまで経っても目が慣れることさえない暗い部屋。ここに、扉を開けた際に、外の光が入り込むのを待ち侘びる。
暗い部屋…完
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