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応接間の襖を開けると、重苦しい空気が立ち込めていた。すっげえピリピリしてるじゃん。入りづらい。
「凛太郎、座れ」
「はい」
若に座れと言われたのでとりあえず正座した。
「こいつがお前に話があるんだとよ」
こいつ、と言われ不機嫌な顔で親指で網谷さんを指す若。一方の網谷さんはニコニコと胡散臭い笑みを浮かべている。
「話とはなんでしょう?」
すると、彼のその口から衝撃の言葉が飛び出してきた。
「凛太郎、お前を幹部候補として引き受けたい」
「は?……あ、いえすみません」
幹部候補?何言ってんだ?俺は幹部相手に怪訝な顔をしてしまった。失礼な態度を取ってしまい口を塞いだけど悪い空気にはならなかった。
「なあ凛太郎、意味わかんねえだろこいつ」
むしろ同調するように話しかけてくる若に俺の頭は疑問符でいっぱいだった。
「質問を変えよう、凛太郎。お前の人生、ただの子守りとして終えるつもりか?」
だけどそう質問されてハッとした。俺はもう、荒瀬に守られる子どもじゃないんだ。今後の人生を選択する年齢に差し掛かっているんだと。
「おい、凛太郎はこれから本家でシノギを覚えていく予定だからお前が口を挟むな」
「志勇、お前じゃダメだ。こいつに愛着があるんだろ?凛太郎が可愛くって今更ヤクザの世界になんてぶち込めねえさ」
「……愛着?」
若はそう呟くと口を閉じた。図星だったようだ。
「子どもができてから変わったよ。身内には甘くなった」
「……」
「俺はこいつと初めて会った時、光るものを感じた。凛太郎は出世するだろう、こんな所で雑用として終わらせるには実に惜しい人材だ」
若は「んなことは分かってる」と網谷さんを睨んで舌打ちをした。悔しそうに顔をしかめるその顔は、どこか悲しそうに見えた。
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