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今年でもう6年になるが、極山の奇襲によって、憂雅の父親である湊人と剛の親父が亡くなったのだ。
それにより兄貴の付き人だった司水が親父の側近に昇格。よって兄貴は新しい付き人を探さなければならなかったが、納得がいかないでずっと機嫌の悪い日々。
しかし組の決定したことだからと、誰にも当たらず愚痴もこぼさないで耐えている様は、さすが未来の若頭だと心の中で賞賛した。
ところが問題は側近候補にあった。噂に聞いた話、そいつらは若頭の側近になれば地位が保証されるとか、そんな狡い企みや野心のあるものばかり。
呆れた。ひとりも兄貴を想い付き人になろうとする者がいなかったからだ。目先の名誉ばかり気にしているようでは、誰も兄貴と釣り合わない。
だからこっそりと俺が立候補した。
俺なら兄貴の扱い方を分かってるし、どんなに傍若無人で自由奔放に生きていても、人を惹きつける強さに憧れを抱いていたのは事実。
それにこの男の傍にいれば退屈しないだろうと思った。まもなくして第一側近は俺に決定され、顔合わせの時に初めてそれを明かした。
「お前、颯馬か?」
しかめっ面で負のオーラを漂わせ部屋に入ってきた兄貴。だが俺を見た瞬間ぱっと顔色を変えた。
しばらく驚きと嬉しさが入り交じった顔をして、いつものように意地の悪い笑みを見せる。
「兄弟が若頭補佐の候補なんて聞いたことねえぞ」
「俺じゃ不満?どっちにしろもう変更はできないから地の底までついていくよ」
「いや、お前で安心した。……言ったな?地獄の果てまで引っ張ってやるから離れるなよ」
そして俺は晴れ晴れとした気持ちで兄貴の側近頭になった。
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