三上さんと大熊くん

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でっっっか。 思わず声に出しそうになって、あたしは自分の頬にぴしゃんと手をやった。 体育の授業のために、ジャージを羽織って体育館へ向かう途中だった。 渡り廊下の先から、ひとりの男子生徒がやってきた。それが、クマみたいにでっかい図体をしている。 目測だけど、185センチはゆうに超えているんじゃないかと思う。男子高校生って、こんなに伸びるものだっけ? 縦に高いだけじゃなくて、体格も良かったものだから存在感が半端なかった。 男子生徒は、折りたたみ式の透明コンテナを抱えていた。中には、ソフトカラーコーンや跳び縄、古くなったボールなどが詰まっている。加えて、両腕にも荷物をぶら下げていた。 見た目からして力持ちそうではあったけど、どう考えてもひとりで運べる量じゃない。危なっかしいなぁと思って眺めていたら、やっぱり渡り廊下のゴムマットに足をとられ、つまずきそうになっていた。 「おーい、それ。途中で落とすなよ。職員室までたいした距離じゃねぇんだからな」   そう言ったのはクマ系男子……ではなくて、彼のうしろを歩いている別の男子生徒。隣には不本意ながらついてきましたという表情の女子生徒がいる。 状況はよく分からなかったけど、たぶんこの三人は、体育の先生から仕事を頼まれたのだ。体育館から古くなった運動用具を運び出しているようだから、体育委員のメンバーかもしれない。 でもだとしたら、何であっちの二人は何も運んでないんだろう? あたしは不思議に思った。 荷物を運んでいるのは大柄なクマ系男子だけ。あとの体育委員メンバーは、彼が転びかけたあとでさえ、手伝うそぶりを見せない。
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