milk

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ちなみに俺と聖花さんは恋人同士ではないし、友達というのもなんか違う。定まる所がなく、言い表す言葉もこの世にはないけれど、でも繋がっている。そんな関係。 俺は大学2年のハタチ。 聖花さんは職業不明の22才。 できあがった夕飯を持って部屋に行くと、聖花さんはソファに座ってテレビを観ていた。笑いが起こるスタジオとは裏腹に聖花さんに表情はない。テレビ番組の面白さ関係なく、基本聖花さんは無表情なことが多い。 「聖花さん」 「あ、できた?」 聖花さんがソファを降り、テーブルの前に座る。 安売りで買った鶏肉が冷蔵庫にあったので親子丼にした。聖花さんは「いただきます」と手を合わせ、スプーンに一口大を乗せて口に運ぶ。そして、長い間咀嚼した後、やっと飲み込む。その表情はどちらかと言うと苦痛そうで、なんかそういう作業を強いられているみたいだ。 聖花さんは極度の偏食家だ。ゼリー飲料やお粥などの咀嚼のいらないものを好むが、基本、食事は自分から摂らない。 食事に限らず、そもそも一日中ベッドかソファの上にいて動かない。うちに来るまでどうやって一人暮らしをしていたのか不思議で仕方ない。 「味噌汁、温め直しますよ」 少食のため聖花さんの量は俺の半分以下しかないのだけど、一口一口に時間がかかるため食べ終えるのは俺のずっと後だ。さらに、一品を完食してから次の品に手をつけるので最後に残った品はすっかり冷めてしまう。 「このままでいい」 「冷たい味噌汁、嫌じゃないんすか」 尋ねると、両手でお椀を持って味噌汁を飲んでいた聖花さんが上目でこちらを見る。 「もしかして猫舌?」 「そうなのかな」 興味なさそうに答えながらお手本みたいな箸の持ち方で豆腐を掴み、ひとつずつ口に運ぶ。伏せ気味の薄い瞼は青い血管が透け、長い睫毛が陰翳を作る。聖花さんが纏う空気はいつも透明で、仄暗い。 でも、綺麗。 もしも天使が本当に存在していたら、こんな容姿をしていると思う。ジッと見ていたら、「ん?」と聖花さんが顔を上げた。俺は慌てて首を振り、惰性でついているテレビに視線を逸らした。
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