終ちゃんのタッパー

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あたしの彼氏、シュウちゃんは変わっている。 もう30にもなろうとしているのに定職についてなくて、気が向くとタッパーを大量に仕入れて売っている。 タッパー。 あの、余った料理とかを入れるただのタッパーである。 この世に売るものは無数にあるはずなのに、シュウちゃんは、何故かタッパーばかりを売る。 あたしは、不思議に思って、ある日、シュウちゃんに訊いてみた。 「シュウちゃん、どうしてタッパーなの?」 シュウちゃんは、堂々として答えた。 「余ったものを無駄にしないところがいいんだ」 シュウちゃんは、本当は、桂木終という名前だ。 かわいい子供に「終」、、終わり、と名づける親の気持ちがあたしにはよくわからない。 なんだか、あたしはいつもシュウちゃんが寂しそうで、ほっておけないので、タッパー売りの仕事だけでは食べていけないシュウちゃんの面倒をみている。 シュウちゃんが、タッパーにこだわるのは、きっとタッパーに自分を入れて守ってほしいからだ。 余っても、捨てたりしないで、愛してほしいからだ。 あたしは、そう思うので、ずっとシュウちゃんをタッパーごと愛していこうと決めているのだった。 「終ちゃんのタッパー」 end
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