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▼ △ 「…………おまたせ、神崎くん」 「え、先輩。 もう脱いでもーたんですか…………」 「当たり前じゃん。 ………………恥ずかしすぎるよ」 「もうちょっと……後でも良かったのに」 「なんでよ。 早ければ早いほど、いいに決まってるでしょ」 「だって…………」 「…………だって?」 「かわっ……………………」 「……………………か、皮?」 「……よう似合ってたのに。キッズ用サンタ衣装」 「もう二度と着ない」 「えー」 「そもそも私、あんなの着るキャラじゃないのにっ……」 「ほんまにねー。 本来着るはずやった実行委員のお子さん、大丈夫っすかね。風邪流行ってんもんなぁ」 「だからって、私が着る必要なかったよね。絶対」 「適材適所」 「誰の、ドコが、"適"だって??????」 「まあまあ、それは置いといて。 とりあえず、そこのベンチにでも座ろ」 「寒いじゃん。それこそ風邪引いちゃうよ」 「すぐやから大丈夫ですよ。 プレゼント渡すだけやし」 「ま、それもそうか。 あ、先座ってて。自動販売機行ってくる」 「ダメ。もう買ってある。 先輩の分のホットティー」 「い、いつの間に」 「先輩待ってる間」 「……ありがとう。あ、お金」 「いや、受け取るわけないやん。 そんなことより、はいコレ。 クリスマスプレゼント」 「わ。ありがとう……開けてみていい?」 「ワレモノやから気をつけて」 「えっ……と……ふ……フラスコ? あ、理科の実験セット?」 「ちゃいますよ。"アロマディフューザー"です。 おうち大好きな先輩にぴったりでしょ」 「でふゅーざあ」 「あ、ちなみに。天然のエッセンシャルオイルやないと使えへんので、気ぃつけてください。 今回とりあえず無難に、ローズ選んどきました」 「ぅえっせんしゃる…… ちょっとオシャレ単語すぎるよ神崎くん」 「どこがですか。 カタカナやったらなんでもオシャレなん」 「とにかく、いい香りがするってこと?」 「そう。いい香りがするってことです」 「えへ。嬉し。ありがとっ!! 帰ったら早速使おう。楽しみすぎるなぁ」 「……そらよかった。ちゃんと説明書読んでね」 「ウン、ワカッタ。 わー、色んな香り集めたいなぁ……どこに売ってるの?なんとかオイルって」 「あー……今度一緒に行きます?説明ムズイし」 「行くー」 「……あの、先輩。 休みの日に外出るの、ちょっと抵抗無くなって来たんちゃうんすか」 「本当だねぇ。 今回もさぁ……コレ選ぶために、ちゃんと家から出たし」 「おわ。デカい袋っすね。なかなかの重さやし。 えっと……コレって……」 「もちろん、神崎くんへのプレゼントだよ」 「……………開けていい?」 「はじめに言っとくけど、文句禁止ね。 神崎くんみたいにセンスないんだから、私」 「……………………」 「あれ。開けないの」 「いやちょっと……念写に挑戦してみよかなって」 「コワ。いきなり怪談話やめてよ」 「あ……開けます」 「ドーゾ」 「えらい可愛い箱………………"低温調理器"?」 「そう!知ってる? お鍋にさして放置するだけでねぇ、ローストビーフとか作れるんだって!」 「すご。初めて聞いた」 「いやぁ、結構悩んだんだけどね。 このパステルカラーのやつしか見つかんなくて、神崎くんには可愛いすぎるよなって……。 でも美味しい物は、一番元気になるからさぁ」 「ほんま、食に思考が偏ってますね」 「んー、やっぱダメだったかぁ」 「いや………… 先輩が考えて、選んでくれたんですよね?」 「そーだよ?」 「俺のために」 「うん」 「家を出て……」 「う、うん」 「…………俺のために?」 「しつこいなっ!そうだって言ってんじゃん」 「……………………めっちゃ嬉しい。 ありがとうございます」 「うーん。でもさぁ、今回のことで気付いたよ。 私……神崎くんの好きなものとか、何も知らないんだなって」 「俺の、好きなもの……」 「だからさ、また今度教えてよ。 今後の参考にするから」 「うん……。 あと少し、覚悟が決まったら言いますね」 「……いや、そんな仰々しい話じゃないんだけど」 ▽ ▲
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