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▼ △ 「……にしても、天気持ちましたよね。ギリ」 「……ほんとギリだね。 お花見日和と言うには、程遠いよ」 「なーんか、この時期って雨多くないっすか? これからお花見シーズンやで、ってときに限って」 「嗚呼、この分厚い雲…… まるで、今の私の心を映しているかのようだわ……」 「いやいや。先輩にアンニュイは無理っすよ」 「あ、ムカつきそう」 「予想の段階ならセーフですね」 「……そもそも、誰の所為だかわかってる?」 「なんでよ。俺はただ、注意してあげただけやん。 先輩が勘違いして、誤った道を目指さんように」 「その話はもういいんだよ。 今は、神崎くんが私に着いて来ている現状に言及してるの。 この程度の買い足し、絶対一人で良かったもん」 「だからー。それこそ、先輩が道に迷わんように導いてあげてるんやん」 「会場から目視できる程の激近コンビニ、どうやったら迷子になるのよ」 「何があるかわからんからね」 「あー……もう。ほんと恥ずかしい。 大勢の前で、あんなこと言われて……」 「もしかして、まだ怒ってんすか? 先輩がこの前の会議で『スクロール』のこと、終始『ストローク』って言うてたんバラしたこと」 「そっちじゃな……いや、それもだけど!」 「それか『先輩だけやと、年確(年齢確認)で捕まって買い出しどころやない』って言うたこと?」 「そうだよ!!!私、完全に笑い者だったじゃん」 「でも実際されてたでしょ。先輩だけやったら」 「され……るけど! 普通にクリアできるよ、証明書あるんだから。 っていうかそれ、遠回しに身長のこと揶揄(やゆ)してない?」 「してませんよ、"遠回し"なんて。 邪推やめてください」 「……邪はどっちよ」 「いやー、みんなオモロかったっすね。 『行ってこい、全力で行ってこい!』やって」 「ってか。そんな全力で行きたかったなら『代わりに自分が行きます』くらい言ってくれれば良かったのに。 変なこと言うから、居た堪れなくて一緒に出る羽目になったんだよ」 「俺だけじゃ、持ちきれんと思ったねんもん」 「……缶3本なのに?」 「一人じゃボールペンしか持てないんで」 「大嘘付き。結局、全部持ってくれてるし。 もー……これじゃ私、ただの役立たずだよ。 絶対、なんか言われちゃう……戻るの勇気いるなぁ」 「……ほな、遠回りします?」 「いやダメでしょ。この缶、どうするのよ」 「走って届けてきます」 「いや、それこそ私が来た意味。 いいよもう。覚悟決めて戻るから」 「えー……」 「何。文句?」 「違う。 でも、こんな時に切れるカードが、俺にはナイ」 「……かーど? あ。もしかして、トランプしたいとか? 私、大富豪得意だよ」 「どんな発想……いや。うん。 良いっすね、トランプ。買いに行こ」 「じゃあ、お店戻って……」 「そこのコンビニには無かったっすよ」 「え、見たの?さっき?嘘でしょ? 今時のコンビニ、置いてるとこもあるよ」 「いや、ここのコンビニにはナイ。500%ナイ。 やから向こうの100均いこ」 「遠いじゃん!」 「図らずも遠回りやね」 「だから。この缶どうするのって」 「走って届けてくるから、ここで待っててください」 「えっ?あ、ちょっと!! そこまでする必要あるーーーー!? …………って全然聞いてないし。 なんであんな楽しそうなんだ」 ▽ ▲
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