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▼ △ 「……大丈夫?今日、結構飲んだよね」 「…………大丈夫やないです」 「えぇ…… じゃあ、もう帰ろ? 思ったとおり、2月の海なんて寒すぎるよ。 なんにもないし。真っ暗だし」 「…………まだ帰れない」 「そうだよね…… まだ、叫べてないもんね。 さあ、どうぞ。あの水平線に向かって。思いっきり」 「いや、そんな奇行をするつもりはないんですよ」 「誰もいないよ?」 「そーいう問題とチガウ」 「えー。 あ、てかさ。ついに明日、内示出るね」 「………………明日、俺、有給」 「うん。明後日教えるね、異動先。 荷造り始めてた方がいいかなぁ」 「ほんとに聞きたくない………………」 「あ、興味ないって?」 「………………」 「無視かいっ」 「…………先輩」 「ン?」 「………………先輩にとって、俺って何?」 「え。また難しいこと言ってる」 「率直に」 「えーーー……5分ほしい」 「待つ」 「んー………………」 「……………………」 「神崎くんは、ねぇ……………………」 「……………………」 「うん…………"居てくれて良かった後輩"、かな?」 「こう、はい……………………。 ………………"ただの後輩"ってこと?」 「えぇ?いや、"ただの"っていうか……。 てか"ただの"じゃない後輩って、どういうの?」 「俺にとって高宮先輩は、"ただの先輩"じゃないよ」 「え。じゃあ、何?」 「……………………聞いてくれる?」 「うん。聞くよ?」 「……………………」 「……………………」 「………………よし」 「お?」 「高宮 咲(たかみや さき)先輩——」 「えっ……はい」 「好きです」 「え」 「初めて会った時から、ずっと好き」 「えっ」 「一生懸命で、前向きなとこも、 負けず嫌いで、へこたれない強さも、 ほんまはビビリのくせに、人一倍責任感強くて、後輩思いなとこも、 自分の気持ちに素直なとこも、 美味しそうにご飯を食べるとこも、 笑ったらできるエクボも」 「え。ちょ……ちょっと……」 「全部憧れで、全部可愛くて、全部好き」 「………………」 「会社でもイベントでも、いっぱい一緒におったら、ちょっとは俺のこと意識してくれるかなって、思っとったけど…………」 「…………………………」 「……結局、俺のがもっと好きになっただけやった」 「あ、あの……その……結構、酔ってたりする?」 「どシラフ」 「わーお……。 な……なんで、このタイミングで」 「俺は土壇場にならな、覚悟が決まらんタイプなの」 「えぇ………………」 「…………どこにも行かんといてよ、先輩」 「そう言われましても……」 「毎日思ってる。『時が止まればいいのに』って」 「そう……なんだ……」 「引いてるやん……」 「いや……ちょっと……びっくりして」 「……困らせてごめん」 「ううん……そうじゃなくて……。 あの……こんなこと聞くの、どうかと思うけど……。 ……私は、なんて返事したらいい?」 「…………まだ、返事はいいです。 気持ちを伝える覚悟はできてたけど…… 振られる覚悟は、できてないから」 「そっ……か……?」 「……やっぱり振るんや、俺のこと」 「え。いや……何も言ってないじゃん」 「だって否定してくれんかったし」 「ええ……言ってることメチャクチャだよ」 「俺は……これからも、先輩に会う理由がほしい。 遠くなって、見えんくなっても、大丈夫って思えるように」 「………………」 「…………だから、 ちゃんと考えてくださいね。俺のこと」 「う、うん…………わかった…………」 ▽ ▲
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