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▼ △ 「先月にさぁ。 『6月はイベントないな』、とか言ってたよね……」 「ね」 「それで……外出るのは、今日だけだぁって……思って……」 「言うてましたねー。そんなことも」 「だから……今月は久々、プラベ(プライベート)で会社の人に会うことないなぁ、とも………思ってたのに……のに……」 「………………」 「なんでいるの!?神崎くん」 「いやー、こっちが聞きたいっすよ。 "俺のイトコ"の、瞬兄の結婚式やったんですよ」 「こっちだって! "私の親戚"の、麗子ちゃんの結婚式だったの!」 「親戚って?」 「私のおじいちゃんの弟の娘さん……が、麗子ちゃん」 「すごない?それ」 「すごいよね。15歳差だって。 おじいちゃんと、弟さん」 「や、そこやなくて。 俺らがここで、一緒になったことですよ」 「いやいや。すごいのは麗子ちゃんと旦那さんでしょ。 バーテンダーとお客さんで、結婚までしちゃうんだもん」 「瞬兄、めっちゃ幸せそうでしたねぇ」 「うんうん。旦那さんが一番泣いてたねぇ。 あんなに愛されて……いいなぁ麗子ちゃん。憧れる」 「え。外出たないとか言うてる割に、そういうのは求めるんや」 「いいじゃん。ほっといてよ」 「いやいや。重要な問題っすよ」 「何?自宅警備員は、愛に憧れちゃいけないとでも?」 「ちゃいますよ。そやなくて。 んー……じゃあとりあえず。 先輩、好みのタイプは?」 「タイプ…………」 「年下でー、高身長でー、仕事できてー、みたいな?」 「えー。年齢も身長も仕事の出来も、どうでもいいよ」 「……アイデンティティまるなしやわ」 「そだなぁ……何か[好きなものに夢中になれる人]がいいかな?」 「あ、まだ救われた。俺のアイデンティティ」 「さっきから何なの?」 「いや、こっちの話。 てか、付き合うならデート行かなあかんやん」 「そりゃ行くでしょ」 「え。インドア名誉会長やのに?」 「勝手に昇格させないで。 好きな人とのお出かけなら別でしょ」 「…………え、先輩。 そもそも、付き合ったりデートしたことあるんすか?」 「………………」 「………………」 「…………あるよ?」 「怪しすぎる間。絶対ウソやん」 「や、やだなぁ。私、今年で24だよ? そりゃ彼氏の1人や……1人……とか……」 「…………1人なんや。元カレ」 「………………」 「え、待って。もちろん、"元"ですよね?」 「うるさいなぁ」 「未練は?ないですよね?」 「………………」 「え????なにその無言」 「もう!しつこい!内緒!!!」 「まってほんまアカンってそれ。 先輩のせいで、明日から出勤せんようなりますよ」 「なんで私のせいになるの、そんな気まぐれストライキが。 ってか、こっちばっかりズルいよ。 そういう神崎くんはどうなの?」 「どうって?」 「元……いや、今付き合ってる人いないの?」 「おらんっすよ」 「じゃあ、これから付き合いたい人……って、それもいないか。 神崎くんがそう思ったら、すく付き合えてそうだもんね」 「……なんそれ。どういうイメージ」 「一応、褒めてるつもり?」 「……………………おるよ」 「え、ウソ。付き合いたい人?」 「付き合いたいというか…… なんかもう、めちゃくちゃにしたい人」 「うわ。なんかいま、ゾッとした」 「おー。先輩の危機管理能力、正常に作動してるんですね」 「いや、あんなの誰でも怖いって言うよ。 そこはかとなく歪んでそうだもん」 「失礼な」 「本人に言わないの? まあ、もっと言葉を選ぶべきとは思うけど」 「……そのうちね」 ▽ ▲ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 『Gimlet』 https://estar.jp/novels/26278058()と麗子さんが結婚するまでの話、こっから見れますよ!」 「バーテンダーとその客の、よくある男女の話よ」 「えぇ……情緒も何もないやん……大事な思い出やのに」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
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