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魔王に憧れて
それは、魔王討伐を目指し、成し遂げられなかった男の手記をまとめたものだった。魔王を倒せなかった勇者の手記なので、敗北者の記録を残すなと、当時の国王や教会の偉い人らによる焚書に会い、ほとんど世に残っていなかったが、家の物置の奥でホコリを被っていたそれを夢中で読んだ。
どうやら、その勇者が俺のご先祖で、
それで家にその本があったのだろう。
運命の一冊というものだ。
それを読んだ俺は、ご先祖様の無念を晴らそうとは思わず、ご先祖様を返り討ちにした魔王に憧れた。
多種多様な魔物を従え、ご先祖様を追撃せず生かして人間界に見逃した魔王の潔さがカッコイイとおもった。
むしろ、逃げ帰ってきたとはいえ、その記録をなかったことしようとした当時の人間の為政者に不快感を感じて、魔王の臣下となり、魔王の四天王として、新たな勇者と戦い、俺は人間には裏切り者と呼ばれたが、魔界では、勇者と戦った英雄として名を残した。
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