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翌朝。
目を覚ますと何故か朝食の支度が既にできていて、俺は怪訝に思いながらベッドの上で上体を起こした。
「あ、おはよう、京介さん。冷蔵庫にあった食パンと卵、適当に使わせてもらったよ」
「…あ、あぁ……」
自然と肩から布団が落ちると、当然のことながら冷たい空気が肌を刺す。
暖房器具と言えばいまはこたつしか機能していないのだから、当然と言えば当然だ。
しかも、遅れて気付けば、自分は何ひとつ身につけていない状態――。
「………」
おかげで、嫌でも昨夜の記憶は蘇り、何となく布団の中に戻りたくなった。
さすがに照れると言うか…いや、それよりも居た堪れない感があまりに強いと言うか…。
そしてその願望通りに、無言で頭から布団を被ろうとすると、なのにそれを阻むかのように、頭上から元気な声が降って来た。
「なに二度寝しようとしてんの。ほら、ご飯冷めるからそろそろ起きてよ」
しかも、思わず動きを止めた俺の上から、すぐに容赦なく布団が引き剥がされる。
「ちょ…おい…っ」
慌てた俺は、咄嗟にそれを取り返そうとするが、殊の外さらりとかわされて、結果、素っ裸でベッドを下りる羽目になってしまった。
もちろん、不本意ながら起き抜けの生理現象もばっちり大公開だ。
「京介さん、朝から元気――」
「いますぐ叩き出されたいのか」
すかさず彼の視線が下向いたから、嫌な予感はしていたものの、直後にはそんな率直過ぎる感想を口にされて、俺は容赦なく冷ややかな一瞥を彼に向けた。
身支度を整えた後も、食事をしている最中も、彼の顔は始終緩みっぱなしで、俺に何をされても言われても、笑顔を絶やさないその様子に、正直早まったかと思わないでもなかったが…。
結局、出掛けに彼が欲しいと言った合鍵を、何だかんだと渋りながらも渡してしまった俺も…。
今更どう取り繕ったところで、自分に嘘は吐けないと言うことなんだろう。
<HAPPY END 2>
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