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▶【帰れと追い返す】
「今日は帰れ。俺はこれからまだ仕事がある」
見下ろしていた視線を細めると、言い捨てながら顎で帰路へと促した。
「…あ、そうなんだ。じゃあ、邪魔しちゃ悪ィな」
俺は彼の返事も半ばにくるりと背を向けた。
背後で、緩慢に立ち上がる彼の気配を感じながら、それでも振り返らずに、開けた玄関扉を潜る。
と、パタンと閉じた扉の向こうで、やがてカンカンと階段を下りる足音が遠のいていく。
「……仕事に…ならなくなっても困るんだよ」
殆ど無意識に零れた言葉は、言い訳のようで、それに遅れて気付いた俺は、自嘲めいた笑みに口端を歪めた。
<END>
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