異端弁護士零

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「なるほど、そんな昔のことがあったなんて」  懐かしさのある話を聞いた前島が語っていたが秋森はずっとそっぽを向いていた。 「君にもあんな頃があったなんて、今でも信じられないよ」 「昔のことを嬉しそうに話すのはおっさんの悪いところだ」  所長が懐かしみながら話しているのに秋森はまだ気分を害している。それは昔話を前島に聞かれたからなんだろう。 「そんな訳で若い秋森くんは、僕に憧れて今現在弁護士の道を歩んでると言うことだ」  はっはっはっなんて笑いながら所長は前島の肩を叩いてから二人の元から離れる。 「憧れてない!」  秋森が近くの要らない書類を丸めて所長に投げつけるが「片付けも頼むよ」とだけ言葉を残して所長はドアを閉めると紙玉がドアにぶつかる。 「ちくしょう! 覚えてやがれ!」  非常に言葉の綺麗な秋森が片付けなんてする気をなくしている。 「この写真は親分と所長なんですね!」  前島は六法全書にあった写真をいつの間にか手にしてまた眺めている。そこには若き秋森と所長の姿。 「てめえ! 返さんか!」  猫が飛び付くみたいに秋森がまた写真を取り返そうとするが、前島は躱して携帯で写真を写真に撮って「記録しました」とニコリとする。 「なんだかもうバカらしい」  若干疲れた印象でその画像までは消せと言う気力が無いような秋森の手に写真が戻り、また六法全書に挟む。 「それで、少しは憧れてたんですか?」  まだこんなことを聞く勇気を持っているのは怖いもの知らずの前島だ。 「忘れたよ」  軽く怒りながら顔をそむけてしまいそれからはもう一つも話さないのに少し笑う様になる。 おわり
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