異端弁護士零

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 弁護士事務所の暇なときは世界が平和ということになる。  秋森穂乃果は優秀な弁護士だ。しかし、それは裁判によらない、言わば口喧嘩で勝ってしまうところにある。  だけど今はちょっとした閑散期。こうなると秋森は仕事以外に講じなけらばならないことがある。 「億劫事だ」  事務所にある普段は人が踏み入らない倉庫の書類ロッカーの前で、秋森はグチていた。 「普段から片付けしていたらこんなことにはなりませんよ」  隣で書類ファイルを抱えている前島が言う。この男はパラリーガルと呼ばれる言わば助手なのだが、秋森のバディとしてはかなり優秀。法律知識も十分で弁護士にだってなれるのだろうが、秋森の部下に甘んじているのは本人の希望。  それにしても秋森はその場に座り込んで前島の働いているのを眺めてる。 「今回はマエに全て任そう!」 「親分の私物のほうが多いんですから逃げないように」  片手を挙げ背を向けた秋森を捕まえると、ゴロニャンと秋森は弱々しく泣いていた。  ロッカーだけに収め切れてなく山積みになっている秋森の荷物は、他の弁護士とは違って弁護依頼に関する書類は少ない。どちらかと言うと意味の分からない私物のほうが多くて今もウクレレが高い棚から落ちて秋森のどたまにヒットした。
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