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「待てーー竹中ぁ」  その翌日もまた僕は追っかけられ、逃げていた。こう毎日追いかけまわされてはたまったものではないが、いくら言っても彼等は苛めをやめようとしないのだから逃げるしかない。僕は無意識で昨日と同じ順路で走り出し、またいつの間にか昨日の道へと迷い込んでいた。昨日と同じく苛めっ子達の声が聞こえなくなると、例の古書店を探してみる。 「あった!」  僕は店の近くへと走ると、入念に店内を探る。またあの店主に見つかったら追い出されるかかもしれないからだ。ソロリソロリと入口のドアを開け。店内へと侵入を果たすと、静かにカウンターの方へと歩み寄る。昨日はそこにあの本が置かれたのを覚えていたからである。店主は不在の様であり、店はガランとしていた。僕は幾つも重なった本の山からあの本を探す。これじゃないあれじゃないと暫し時間を潰していると、漸くお目当ての本を探し出した。早速手に取ると、裏側を見る。よくそこに値段のシールが貼ってあるだが、その本には値札がなかった。どうしようかと迷っていると、店の更に奥から足音がしたのが聞こえた。僕はマズイと思うと本をカバンに仕舞い、店の外へと駆けだしてしまったのである。息が切れるまで走り続けて、見覚えのある街並みが見えた頃、それが万引きという犯罪であることに気付いた。どうしようかと迷ったが、今更どうしようもない。大切にカバンを抱えると、帰宅した。
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