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「そういえば、今日は体育祭のリレーの話、するんだよね?」
「そうだったね。藤本さんは、足、速いの?」
彼女のことを知りたくて、何気ないことでもつい質問してしまう。
「私はそんなに速くないよ・・・塩見くんはバドミントン部でも速いって聞くし、頼りにしてるよ!」
そう。俺はバドミントン部。れっきとした運動部だ。ちなみに彼女は文芸部。
女の子に頼られて、嫌な気持ちになる男なんていない。
顔が赤くなりそうなのを頑張って抑えて、ホームルームまでの時間を過ごす。
キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴って、委員長が話し始める。
「はい!リレーの順番決めまーす。」
「俺アンカー!」
「落ち着いてください。アンカーは1番最後に決めます。」
はははは、と笑いが巻き起こる。隣を見ると、藤本さんも笑っていた。その顔がなんだか愛おしく思うと同時に、盗み見してしまった罪悪感から前を向く。
「1番とアンカー以外はこちらで決めてきました。発表していいですか?」
「いいよー!」
みんなが返事をする。もう決められているのか。スムーズで良いじゃないか。と、どこからの目線なのか分からない感想を抱く。
「それじゃあ・・・2番、井上。3番、池上。」
「私たち、なかなか呼ばれないね・・・」
藤本さんにそう囁かれる。少しドキッとしてしまったのは置いておいて、そうだね。と返事をする。
「・・・24番、藤本。25番、塩見。」
しばらく経って、藤本さんの名前が呼ばれる。そして、俺の名前も。
「39番、川内。40番、花田。」
1番とアンカー以外は呼び終わった。すると隣から声をかけられる。
「塩見くん、前後だったね!」
「あ、うん。藤本さんが前なら安心だ。」
「あはは、そんなことないよ。」
俺は心の中でガッツポーズをする。藤本さんと関わる機会が増えるのは素直に嬉しい。
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