気高き金木犀

2/2
前へ
/2ページ
次へ
「そういえば、今日は体育祭のリレーの話、するんだよね?」 「そうだったね。藤本さんは、足、速いの?」 彼女のことを知りたくて、何気ないことでもつい質問してしまう。 「私はそんなに速くないよ・・・塩見くんはバドミントン部でも速いって聞くし、頼りにしてるよ!」 そう。俺はバドミントン部。れっきとした運動部だ。ちなみに彼女は文芸部。 女の子に頼られて、嫌な気持ちになる男なんていない。 顔が赤くなりそうなのを頑張って抑えて、ホームルームまでの時間を過ごす。 キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴って、委員長が話し始める。 「はい!リレーの順番決めまーす。」 「俺アンカー!」 「落ち着いてください。アンカーは1番最後に決めます。」 はははは、と笑いが巻き起こる。隣を見ると、藤本さんも笑っていた。その顔がなんだか愛おしく思うと同時に、盗み見してしまった罪悪感から前を向く。 「1番とアンカー以外はこちらで決めてきました。発表していいですか?」 「いいよー!」 みんなが返事をする。もう決められているのか。スムーズで良いじゃないか。と、どこからの目線なのか分からない感想を抱く。 「それじゃあ・・・2番、井上。3番、池上。」 「私たち、なかなか呼ばれないね・・・」 藤本さんにそう囁かれる。少しドキッとしてしまったのは置いておいて、そうだね。と返事をする。 「・・・24番、藤本。25番、塩見。」 しばらく経って、藤本さんの名前が呼ばれる。そして、俺の名前も。 「39番、川内。40番、花田。」 1番とアンカー以外は呼び終わった。すると隣から声をかけられる。 「塩見くん、前後だったね!」 「あ、うん。藤本さんが前なら安心だ。」 「あはは、そんなことないよ。」 俺は心の中でガッツポーズをする。藤本さんと関わる機会が増えるのは素直に嬉しい。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加