気高き金木犀

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「藤本さん、いつも金木犀の髪飾りしてるよね。気に入ってるの?」 そんな在り来りな話を振ってみる。 「うーん。金木犀の花言葉が好きなんだよね。『気高い』って言うんだけど。私もそうなりたいなぁ・・・って。」 「金木犀、そんな花言葉なんだ。」 初めて知った。藤本さんは花が好きなのだろうか。 「あ、あと前から言おうと思ってたんだけど。」 「なに?」 そんな前置きをされると動揺してしまう。 「『藤本さん』じゃなくて、名前で呼んでよ。圭って。」 「・・・いいの?」 「もちろん!塩見くんとは仲良いと思ってるし!」 そんなふうに思っててくれたんだ。照れてしまう。顔に熱が集まるのを頑張って阻止する。 「それじゃあ・・・俺のことも、新って呼んでよ。」 「新くん!」 そう言って彼女は無邪気な笑顔を俺に見せる。鼓動が早まる。この笑顔を独り占めしたい。そう思ってしまった。 ――俺は、藤本さん、いや、圭のことが、好きだ。 付き合いたいとか、そういう意味で。恋愛感情で。 気になる、じゃ収まらなくなってしまった。 「よし!片付け終わりー!」 「それじゃあ、教室戻ろっか。もうみんな帰ってるかな?」 「かもねー。私も電車の時間近いし、急がなきゃ!」 圭と二人、歩いて教室に戻る。 するとそこにはバドミントン部の同期が集まって話していた。 「おい新ー!藤本さん狙ってんのか!?」 冷やかされる。圭の方を見てみると、彼女は少し曇った顔をしていた。 きっと圭は、俺と同じ気持ちではないだろう。 ――それならば、好きにさせるまでだ。 でも、あんまりかっこいい返しは出来なくて、口にしたのはこんな言葉だった。 「圭とはそういう関係じゃねーよ!」 否定するが、俺はそういう関係になりたいと思っている。でもまだ、まだだ。急いではいけない。 「わ!私、電車だから、帰るね。」 圭はそそくさと鞄を準備して、帰ってしまった。 「お前ら・・・冷やかすなって。」 「えーでも実際どうなの?藤本さんとは。さっきも圭とか名前で呼んでたし。」 そう聞かれて、手汗が滲んでくる。 「まだ・・・そんな関係じゃねーよ。」 「えーそうなん?いい感じっぽく見えたけど。」 そして、禁断の質問。 「じゃあ・・・新はさ、藤本さんのこと、ぶっちゃけどう思ってるわけ?」 「・・・それは・・・」 好き。だ。さっき自覚したばっかりだけど。 でもこいつらに言ったらなんとなく、冷やかされてその結果俺が圭に嫌われて終わりそうな気がして。 「別に・・・なんとも思ってないよ。」 「嘘だー!!」 「新、隠し事はナシだろ?」 詰められる。もう堪忍しないといけないか。 「・・・まあ、好き、だけど。」 「ひゅーーーー!!!!」 「新言ったー!!!!」 やっぱり冷やかされる。この場に圭が居なくてよかった。 「それでー?藤本さんのどんなとこ好きなの?」 「え・・・それ、言わなきゃいけない?」 「言った方が面白いだろ!」 俺の真剣な恋愛をエンタメとして見てるのか。こいつらは。 やれやれ。と思いながらも、調子に乗ってしまった俺はべらべらと圭の好きなところを話してしまう。 「えっと・・・笑顔が可愛いところとか、意外と可愛いもの好きなところとか。」 「いいねー恋愛してるねー。」 「羨ましいわぁー。」 なんだよその反応は。とは口に出さなかったが、笑顔が可愛いところも、可愛いものが好きなところも、全部ひっくるめて圭が好きなのは事実で。語りだしたら止まらなくて、日が暮れるまで同期と恋バナしてた。
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