気高き金木犀

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「圭、おはよう。」 「あ!新くんおはよう。昨日は急に帰っちゃってごめんね?」 昨日急に帰ってしまった圭が気がかりだったが、俺がいつも通りの挨拶をすると普通に挨拶し返してくれた。あ、ついでに名前呼びで。嬉しい。圭と仲良くなれた気がして。 「あ!待って消しゴム忘れてきちゃった。」 ガサゴソと鞄と筆入れを漁りながら圭はそう言う。 よし、いい所見せなきゃ。 「俺、二個持ってるから貸そうか?」 「いいの?ありがとう新くん。」 二個持ってるなんて嘘だ。本当は一個しか持ってない。今日は文字を書き間違えないようにしなきゃな・・・ 「よー!新おはよ!」 「おー、浩おはよう。」 昨日恋バナした、同期の浩が挨拶してくる。 「藤本さんも!おはよー!」 「あ、平田くんおはよう。」 浩は去っていく。あれ、冷やかさないのか。と安堵した。するとスマホに通知がくる。浩からメールだ。 『いい雰囲気だから邪魔しないでおいた 感謝しろよ!』 なんだコイツは。感謝もなにも、冷やかす方が100%悪いだろ。 まあ、でも―― 『ありがとな。』 そう、返信しておいた。 ガラガラ、と教室の扉が開く。 「はい。ホームルーム始めるぞー。あ、体育祭終わったら席替えするからな。くじ引きでいいかー?」 ――席替え。 最悪の響きだ。圭と俺は席が近いから仲良くなれたのだ。席が遠くなったら口実がないと話せなくなる。 席替えなんて、無くなればいいのに。 前までは席替えって聞いてウキウキしてたけど、好きな人ができるだけで人ってこうも変わるんだな。 と、その前に体育祭があるのか。体育祭、圭にかっこいいとこ見せなきゃ。 あと――リレーでミスらないようにしなきゃ。
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