気高き金木犀

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体育祭当日はすぐにやってきた。 「持久走で1位取ったら、付き合ってください!」 体育祭だからあると思ったけど、人生で初めて見る公開告白だ。としみじみ。 あんな勇気があるの凄いよな・・・俺も、圭にあんなことしてみたいけど、圭はそういうの嫌いそうだな、とすぐに圭のことを考えてしまう。好きな人ってすごい。 結局その人は僅差で2位で、付き合うことは叶わなかったらしい。虚しいことだ。俺まで悲しくなってしまう。 ついに、リレーの時が来た。 「圭、頑張ろうね。」 俺は圭に声をかける。今日も金木犀の髪飾りは外している。そして俺は、こんな在り来りなセリフを言うだけでも、圭を前にすると心臓はバックバク。 「うん。バトンも練習したとおりにできるよ。新くんなら!」 圭は優しくそう言ってくれた。圭がそう言ってくれるだけで、俺は誰よりも頑張れてしまう。例え最下位でも1位まで追い上げられそうだ。 「よーい、スタート!」 パーン、とピストルの音が鳴ってリレーが始まる。 俺たちの4組は現在2位。このままキープしてくれ。 2番、3番、4番・・・と、どんどんバトンを繋いでいく。 ついに、圭の番。そして俺もコースに入る。 圭が全力で走る。こちらに近づいてくる。 「はい!」 「おう!」 バトン繋ぎは上手くいった。まだ2位。ここで追い越して、圭にいい所を見せてやる。 必死に足を動かす。前方約5メートルに1位の3組が見える。 ――絶対に、追い越す! 「新くん!頑張れー!!」 トラックの反対側から、圭の声が聞こえる。 ――頑張るよ。圭。 「おっとー!4組の塩見くんが、陸上部の3組西山くんを追い越して1位になったー!!」 放送部のアナウンスが聞こえる。やった。やった。 このまま走り続けろ。いける。頑張れ、俺! 次の人にバトンを渡す。 ――圭に教えてもらったように。 「首位をキープしたまま、塩見くんから杉山くんにバトンが渡されました!」 はぁ、はぁ、と肩で息をしながら俺は走り終わった列に並ぶ。 「新!すげえよ!」 「よくやったなー!!」 口々にクラスメイトが賞賛してくれた。こんなに褒められても、何も出ないぞ、と思うが、素直に受け取っておこう。 俺の活躍もあってか、俺たち4組は1位をとることが出来た。 陣地に戻ると、圭が俺の方に駆け寄ってくる。かわいい。 「新くんすごいよ!!」 「あはは・・・圭が応援してくれたおかげかもね。」 「そんな・・・新くんが頑張ったからだよ!」 と、俺の圭を見る視線の先に、浩。 口パクで「がんばれ」と言っている・・・と思う。 頑張るか。ちょっと攻めてみよう。 「いや、圭の応援が力になった。ありがとな。」 「あはは・・・」 苦笑いされた。作戦失敗! 辛すぎる。頑張った後にこの仕打ちか。さすがにちょっと攻めすぎたか。好きでもない人にこんなこと言われたらちょっと引く気持ちも分からなくは無い。ちゃんと、「圭は俺と同じ気持ちではない」ということを頭に入れて行動するべきだった。 と、浩をみると――「ドンマイ」そう口パクで言っている・・・・と思う。
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