気高き金木犀

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ちょっと憂鬱な気持ちのまま、次の競技、玉入れに挑む。高校生にもなって玉入れって、ちょっと面白いが、優勝したい俺たちはもちろん全力でやる。 「おりゃー!!!入れ!!!!」 「いけ!こっちに玉集めろ!」 何事にも全力だ。体育祭にも全力になれないスカしたような男は俺は嫌いだ。し、圭も嫌い・・・であって欲しい。俺とは真逆のタイプだから。 そんなこんなで全部の競技が終わり、ついに結果発表。 「優勝は――2年4組!」 わあっ、と歓声が巻き起こる。もちろん、俺もその中の一人。 「やったぁー!!!」 「待って涙出てきた、感動、ヤバい。」 泣いているものもいる。俺も少しうるっと来てしまったが、圭が見ているかもしれない。こんな所では泣けなかった。かくして、俺の体育祭は幕を閉じた。 「新くんおはよー。」 「あ、圭おはよう。」 「昨日の今日だからすごい疲れちゃった。ねむーい。」 圭は眠そうな目を擦りながら挨拶してくれた。今日は金木犀の髪飾りをつけている。昨日苦笑いされたから気まづいかと思ったが、そんなこともなく、いつも通りの関係性だった。 「あはは。眠そう。俺もまだ疲れ残ってるわ。」 いい男はまず共感から。ネットのどっかで仕入れた知識だ。 「あ、今日席替えだねー。」 「そう、だな。」 席替え。そうだった。 最悪だ。圭の隣を離れないといけなくなってしまう。 そして、誰かに圭の隣を渡さないといけない。 それは嫌だ。好きな人の隣の席になった人に嫉妬しない男なんて、よっぽど自分に自信のある人しかいないだろう。 「窓側の席がいいなー。新くんは好きな席ある?」 圭の隣ならどこでも・・・なんてことは言えず、クーラーがよく当たる席かな。なんて普通のことを言ってしまう。 「あはは。たしかにクーラーよく当たる席は当たりだよね。」 圭とこんな日常会話が出来るのも今日で最後か。 話しているうちに、担任が教室に入ってきたようで、ホームルームが始まる。 「隣の席の人に別れ告げてー。はい、前に来てくじ引いてね。」 「楽しかった!ありがとう新くん。」 「・・・こちらこそ。ありがとう。」 担任、「別れを告げる」なんて悲しい言い方しなくてもいいじゃないか。 この席に未練の全く無さそうな圭を見て、少し悲しくなる。と、そんな暇は無い。早く前に行ってくじを引かなければ。 ガサ、と適当に混ぜられた、くじという名の番号の書かれ折られた紙を手に取り、開く。 俺の番号は、「1」。 ――教卓の真ん前じゃないかよ!!! で!隣は―― 「よう、新、隣だな。」 浩!!!! 落ち着け。浩じゃない方の隣は・・・? 「お、新、隣じゃん。」 ぽっちゃり愛されキャラの昇くん!! いい子だし嬉しい!けど!!!! 圭、はどこだ・・・? 黒板を見ると、35番の所に、藤本圭と書いてあった。 35番。1番後ろだ。
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