陽報

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陽報

「パパー、ママー!」  元気に走り回る多嘉楽の頬は桃色を通り越して真っ赤だ。良く食べるので他の子よりもふっくらしている。  僕は前と同じ道を歩むべく努力した。ひとつ道を誤れば違う人生になってしまう。同じ高校に入り同じ大学へ入り、そして真澄と結婚した。  真澄は何も覚えていなかった。多嘉楽を生みその後職場に復帰し精力的に働いている。育児にも家事にも手を抜かない努力家だ。 「上手く乗れないよぉ」  多嘉楽は自転車に乗る練習をしていた。何度も転んでは起き上がる。でも中々乗る事ができなかった。 「今日はこのくらいにして、また練習しましょう。怪我したら大変よ」  砂まみれになっている多嘉楽を見て、真澄が声をかけた。 「まだ頑張る! だって努力は報われるんだもんね、パパ」  はち切れんばかりの笑顔で微笑む多嘉楽。うん、多嘉楽の努力は今、報われているんだよ。 〈終〉  
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