病魔

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病魔

「大きな病院で診てもらえって言われたの」  多嘉楽の定期検診に行ってきた真澄が、夕飯の時不安そうに報告してきた。 「どこか悪いのか?」 「検診じゃ何とも言えないからって。どうしよう、重たい病気だったら……」  検診で疲れたのだろうか。多嘉楽はベビーベットの中ですやすや眠っている。は頬が赤いものだと思っていたが、多嘉楽は白い頬をしていた。ふと湧き上がる嫌な予感を、ギュッと目をつむり振り払った。 「大丈夫だ。多嘉楽は元気じゃないか」 「でもよその赤ちゃんに比べて細いし、ミルクもあんまり飲まないような気がする。それに他の赤ちゃんたちは診察を嫌がって暴れたり泣いたりしてたけど、多嘉楽は大人しくじっとしてた。やっぱり病気なのかしら……」 「とにかく受診しよう。悩むのはそれからだ。そして病気だったとしても、そうでなくても、僕たちは全力で多嘉楽を育てる。そうだろう?」 「そうよね、そうだわ。病気だろうが元気だろうが、多嘉楽は私たちの宝物。一生懸命育てるのに変わりはないわね」  真澄も落ち着きを取り戻したようだ。ようやく箸を持ち夕飯をつつき始めた。 「心臓移植……?」  小説やドラマでしか聞いた事のない言葉が、医師の口から発せられた。 「心筋が薄く収縮力が弱い、心不全状態です」 「手術で治せないんですか?」 「移植しか方法はありません」 「じゃあすぐにお願いします」  医師はふうとため息をついた。 「では移植の方向で進めていきます。ただ、同じ病気で順番を待っている患者さんもたくさんいます。もっと重い症状で一刻を争う子どももいます。重症な方が優先されますので、しばらくお待ちいただく事になります」  それから僕たちの戦いが始まった。
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