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「許せん」
「え?」
「許せん。シェイクスピアのやつめ。クレオパトラは気高き古代エジプト最後の女王!決して哀れな女ではない!」
こうして、クレオパトラは激怒した。
クレオパトラは、シェイクスピアへの復讐を誓った。
といってもシェイクスピアはもうこの世にはいない。
もしかしたら、自分のように生まれ変わって、どこかで暮らしているかもしれないが……
「篠田!」
「はいッ!」
突然の女王からの呼び声に、篠田は背筋をピンと伸ばす。
「シェイクスピアが一番嫌がることはなんだと思う?」
「え?シェイクスピアが嫌がること?そ、そりゃあ劇作家だから、自分の作品が忘れ去られたり、けなされることが一番嫌なんじゃないでしょうか」
「なるほど。なら、とことんけなして忘れさせてやろう。シェイクスピアをこの世から抹殺してやる」
「……と、言いますと?」
「シェイクスピアを超える劇作家を生み出せばよい」
「……」
そう凄む女王の禍々しいオーラに、篠田はただ目をパチクリさせていた。
「篠田ァ!」
「はいッ!」
「そなたの文才、私のために思う存分発揮するがいい」
「そなた」
「私のためにヤツを超える作品を書け」
「シェイクスピアを?超えるんですか?」
「そうだ」
「無理じゃないかなぁ……」
「無理じゃない!私を誰だと思ってる」
「倉井晴奈さん……?」
「違ァァう!」
「はいッ!」
「私はクレオパトラ、クレオパトラ7世フィロパトル」
「ふぃろぱとる」
「私と共にシェイクスピアへ復讐する名誉を、そなたに与えてやる」
「めいよ」
クレオパトラは篠田の襟元を掴み、ずいっと自身の顔に寄せた。篠田は思わず唾を飲む。
「そなた、ひとまず私の家に来い。執筆活動を支援してやる。共に暮らすぞ」
「ともにくらす」
篠田は、ひどく赤面した。
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