本編

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「なに、これ……?」  さっきまで笑っていた親友の顔が恐怖で歪む。冗談で肩を叩いただけなのに、その部分から異臭が漂い始め濁った汁を出しながら溶け始める。  何が起こったか理解できない、冷静でいられるわけもない。とにかく彼女を背負って保健室に連れて行こうと決めた。それなのに触れた個所は夏場のアイスのようにぐちゃぐちゃ、その感触はあまりにも人間離れしていて本能的に拒絶してしまう。切断面から飛び散る鮮血を浴びて思わず手を離すと、皮膚は簡単に剥がれ指の隙間からこぼれていく。 「あっ……あっ……」 「待ってすぐ助けるから!」  今度こそ親友に手を伸ばそうとしたその時、両腕は腐り落ちてしまった。あまりにあっさりと、そして動く隙すらもくれずに。  目を白黒させながら彼女は喉が枯れるほどの叫び声を上げて前のめりに体勢を崩す。そんな彼女を抱き留めた。背中に触れた指先に彼女の熱を感じながら、次のことを考えようとする……でも、受け止めたのは間違いだった。  手の平はゆっくりと沈み込んでいく。泥のようにねっとりとした血混じりの皮膚が纏わりついて、どんどん体温を高くしながら彼女の内部へ奥へと。あまりの異質なことに手を抜こうとするけど、そうすれば彼女が激痛を訴えて泣きながら歯を鳴らす。  何もしなければ助からない……こんな意味不明な状況で私は何をすればいい? もちろん彼女は助けたいし、見殺しにだってしたくない。考えれば考えるほど焦燥し、無力な自分に無責任な涙が頬を伝う。  止まれ、止まれ……そんな神頼みしかできない自分が嫌になる。 「ねぇ、早く助けて……もう痛いのは嫌だ……」  彼女はもう既に限界なのか、光の無い瞳は生きる希望を失っている。首より下はもはや原形を留めていない。そんな状態なのに彼女は最期に笑顔を見せる。 「友達でいてくれて……ありがとう……」
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