群青に溶ける

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 空は高く、その先も見えてしまいそうなほどに透き通った青が眩しい小春日和。  私は畑じまいをしていた。  夏の間、自宅敷地内の小さな畑で家庭菜園を楽しんでいたが、もうそれも終わりの時期だ。  今年は例年になく、胡瓜がバカみたいにたくさん採れて、自分ひとりじゃ食べきれずにご近所さんに配って歩くほどだった。採れたての野菜たちはどれも新鮮でみずみずしくて、スーパーに売られているそれらの比じゃない程に甘くて美味しい。手塩にかけて育てた野菜たちは格別なのだ。  家庭菜園、ぬか床、梅酒づくり。晩秋には鰊漬け……。冬には、ほぼ毎日雪かきが必要となるのが北国の常。  これらは、暇を持て余した独居老人である私の仕事みたいなものだ。  体を動かし、忙しなく何かをしていると、この先の不安や寂しさがまぎれる。  早くに夫を亡くし、女手一つで育てた娘は就職のために上京。そのまま家庭を築いて幸せに暮らしている。  ありがたいことに、私は今まで大きな病気一つせずに古希を迎えた。  この先も自立した高齢者を目指すべく、健康管理には留意している。  
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