群青に溶ける

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「明日ね、こっちにいる先輩と会う約束をしているんだ……」  翠は少しだけ早口でそう言って、紅茶を啜った。  心なしか、翠の頬が赤らんだように見えて、「ははぁん、なるほどね」と、私は小さく笑った。   「若いって良いわねぇ」  つい本音がこぼれ落ちた。 「ばあちゃんだって、まだまだ若いでしょ」 「ふふふ、そうね。気持ちだけは永遠の二十歳よ」  私は、指でVサインを作って見せた。  この日の晩は、豚ロースの薄切り肉があったので、大葉とチーズを挟めてしそカツにした。  揚げ物なんか、いつぶりだろうか。  庭で採れた最後の小さなナスをみそ汁の具にして、キャベツの千切りとミニトマトを付け合わせた。それから、作り置きのひじきの煮物を小鉢によそって、いつもよりも豪華な食卓となった。 「美味しい」と言って、もりもり食べてくれる翠を見ているだけで、私のお腹はいっぱいになる。 「おかわりあるよ?」  私の声かけに、翠はブンブン首を横に振って「やだ、太っちゃう」と、眉を下げた。そして、その言葉とは裏腹に、私に向かって遠慮がちに茶碗を差し出した。 「細すぎよ! 普段からちゃんと食べてるの?」  私は、お茶碗いっぱいにご飯をよそった。 「食べてるよぉ……食欲マジえぐい」  マジ……えぐい?  時々、翠の発する若者言葉に戸惑いはしたが、こんなに楽しい食卓は久々でじんわりと体の奥が温まる感じがした。  
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