群青に溶ける

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「ねぇ、帰ったらさ、ばあちゃんのお勧めの本教えてね! 行ってきまーす」  私は翠を見送り、今晩の夕飯の献立を考えた。    あら? 夕飯前に帰ってくるのかしら。  聞きそびれちゃた。  早速、昨日教えてもらったスマホのメッセージアプリを立ち上げた。 『言うの忘れたけど、今日は遅くなります。夜ご飯はいりません』  私が問う前に、翠からメッセージが届いていた。    そりゃそうか……じゃあ夜は余り物で良いわね……。  私は『了解』と、返信する。  文字が小さくて敬遠していたスマホのメッセージ機能だが、翠が文字のサイズを大きく設定してくれたら随分と使いやすくなって、これなら私にも出来そうだと思った。  「気持ちは永遠の二十歳よ」と言ったからには、時代に置いていかれないように努力が必要だわねと、一人で苦笑する。  翠が文芸部に入っていたということを聞いて、なんだかとても嬉しかった。  お勧めの本ねぇ。翠はどんなのが好きなのかしら……と、本がぎゅうぎゅうに詰まった書棚に向き合った。  古い本から、わりと新しめの本まで、思い入れの詰まった本ばかりだ。  図書館を利用することもあるが、気に入った作品はやはり手元に置きたくなって、読んだことがあっても購入してしまう。  そんなだから、書棚はぎゅうぎゅうだし、入りきらない本は部屋の隅に積み重なっている。   「あなたたち、私が死んでも行先がありそうよ」  私は書棚に並ぶ本の背表紙を優しく撫でた。  
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