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襲撃
「ええー…」
夜遅くに帰宅したアレンは、荒れ果てた部屋の入口に立ち尽くした。
月明かりに照らされた家具が、あるべき場所からすべてひっくり返されているのを目の当たりにする。
辺境のど田舎の山奥の一軒家に押し入る強盗がいるのか。いや、いるから、この有り様なわけだ。
隠す気もなく窓が盛大に割られ、内側である床にガラス片が飛び散っていて、そこから侵入したのだろうか。
主に棚が荒らされ、何かを探していたと思われる。だが、そんな金目なものなどない質素な暮らしである。ついこの間までは年老いた父親と二人暮らしで、その父親の葬儀から帰ってきて、これである。
ただでさえくたびれた中年のおっさんであるアレンは、深く深く溜息をつくと、倒された椅子をひとつ起こして、そこに腰掛けた。
「寝よ…」
明日の朝、考えよう。
たぶん寝心地は最悪で、翌日は体がばきばきに固まって後悔するに違いなかったが、そんなことがどうでもいいほどに、眠かった。
――すべての面倒事は、明日の俺がやればいいさ。
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