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2.天使を探す少女たち
帰り道、ふと天使を見つけられなかった人をなんて呼ばれているのだろうと思った。天使を見つけた人を視者と呼ぶなら不視者だろうか、それとも、別の呼び方があるのだろうか。歩きながら携帯デバイスで調べていたが、まったくヒットしない。
そんなことをしていると、声をかけられた。
「歩きデバイスは危険ですよ。転倒の恐ればありますし、事故にあう危険もあります」
余計なお世話だと思ったが、すぐに笑顔を顔に貼り付け、本気で心配そうな顔のおばさんに答えた。
「ありがとうございます。そうですよね。気を付けますわ」
おばさんはそれで満足したのか、心底安心したように去っていった。
周りに誰もいなくなったことを確認していると、白い何かが角を曲がったのが見えた。
「天使だ!」
私は全力でその天使を追った。急いで角を曲がったが、また羽先が角を曲がったのが見えた。天使は私をおちょくるのが好きらしい。走ってその角を曲がるが、また羽先が角を曲がった。
それを何度も繰り返した。その間に、何度も善意の視者が注意してきたが、そんなことにかまってられなかった。ようやく私の天使を見つけたんだ。この機会を逃すわけにはいかない。
「待ちやがれ!私の天使!」
そう叫んで角を曲がると、そこには子供っぽい小さな羽のついた鞄を背負った人がいた。急には止まれず、私はその人を後ろからぶつかってしまった。その人は少しよろめいてから振り返った。
「わわ!どうしたの?キリエ」
上がった息を整えながら、がっかりを隠すこともなく答えた。でも、天使を探していたことは隠して。
「あんたこそ、こんなとこで何してんのよ。ルコ」
「私はもちろん天使を探してるんだよ!」
屈託なく答える小さなルコが首を傾げた。今度は私が答える番らしい。
「私は……運動よ。悪い?」
ルコは激しく首を振った。
「で、天使は見つかったの?」
「ううん。こっちの方で見たって人がいたから探しに来たんだけど、まだ見つからない」
「こっちの方って……」
そこで初めて周りを見て、危険地帯に足を踏み入れていたことを知った。そこは街中心部から離れ、暗黙裡に誰もが近づかないように注意している場所だった。もう少しいけば廃墟となった巨大なショッピングモールがあり、そこは人さらいや人殺しが根城にしていると噂されていた。
「ここは危ない。ルコ、行こう」
「でも、天使が……」
「ここに天使はいない!」
思わず強く言ってしまた。ルコがビクッとしたが、私は気にしないふりをしてルコの手を引っ張ってその場を後にした。
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