3.正しくて、優しい

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3.正しくて、優しい

 視者になる方法は、教皇に自分が見た天使の姿を申告するだけだった。  それなら嘘をついてもバレないだろうし、その程度で視者になれる。  この世界に、どれだけの人が本当の視者で、どれくらいの人が嘘をついて視者になったのだろうか。いや、この考え自体が間違ってるか。視者は嘘をつかない。いつだって正しくて、優しい。  でも、時々思う。誰かに優しくしようと躍起になって、全員が監視しているようだって。少しでも弱みを見せれば、獲物を見つけたといった感じで優しくしようとする。  優しさで殴られる身にもなってほしい。「お前は弱いんだ」と自分の弱さを強調された気分になる。だから、全力で「辛くない」、「大丈夫だ」って立っていないといけない。  私も視者になれれば、そういう苦しみから抜け出せるのだろうか。  学校が終わり、あくびが出る。そろそろ薬の時間だった。 「ルコさん、今度こそ天使を見つけられるといいですね」  ルコという単語が聞こえ、意識がそっちに向いた。教室の隅でサキが友達が話していた。 「そうね。彼女、一生懸命探されていますし、1日でも早く天使が見つかればいいわ」  へえ、ルコはまた天使の目撃情報を聞いて探しに行ったのか。殊勝なことで。 「あそこなら絶対にいますわ。あのショッピングモールには、天使の目撃情報がたくさんありますもの」  そう聞こえた瞬間、心臓が冷え、その反対に頭が熱くなって叫んだ。 「どういうことだ!ルコにあの廃墟に天使がいるって言ったのか⁉︎」  教室にいる視者たちが私に注目しているのを感じる。でも、そんなことに構っていられない。サキに詰め寄り、胸ぐらをつかんだ。 「あそこに天使はいない!いるのは人さらいだ!そんなとこにルコ一人で行かせたのか!」 「なにをそんなに興奮していますの?私はルコさんの力になりたくて教えて差し上げたんです」 「お前、本気で言ってるのか!」  ルコに意地悪をしているのだと思った。でも、サキの顔にはそんな感じはなかった。優しくしたのに、言われもなく怒鳴られて困惑だけが見られた。  そのおぞましさに手を離した。眩暈がする。 「キリエさん、大丈夫ですか?」  サキが私に手を差し伸べる。それを乱暴に振り払い、私は教室を飛び出した。
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