6.たとえ一人になっても

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6.たとえ一人になっても

 天使を見つけたから、幸せなのだろうか。  それとも、幸せだから天使を見つけられるのだろうか。  もし後者だとしたら、私は一生天使を見つけられないだろう。  目を覚ます。いつもの保健室の天井が見えた。  ぼんやりした頭で、精一杯意識を拾い集めた。廃墟のこと、ルコのこと、天使のこと。しかし、それは白い靄の向こうにあり、全てが夢だったような気がした。  そして、ルコの笑顔がよぎった時、一気に覚醒した。 「ルコ!」  勢いよく起き上がった。  先生がカーテンを開いて顔を出した。 「目が覚めたんですね。大丈夫ですか?校門の前でルコさんと寝ていたので心配したんですよ」  先生の話を遮り、聞いた。 「先生、ルコは?」 「ルコさんは校庭にいますよ。天使を見つけたって嬉しそうに走り回っています」  すぐに保健室を飛び出して、校庭に向かった。上履きのままなのも構わず校庭に出た。  ルコが嬉しそうに走っている。背負った鞄の羽がぴょこぴょこと跳ねていた。元気そうなその姿を見て、緊張が抜けていく。  ルコが私を見つけて近づいてきた。 「キリエ。私、天使を見つけたの。とっても小さな羽の天使で、私を見ていたの」 「そうか。なら、もう天使を探す必要はないな」  ルコは少し考えた後、「うん!」って勢いよく頷いた。  私は安心した。もうルコは危ない場所に行くことはないだろう。視者たちと一緒に幸せに生きていくだろう。例えルコが見た天使が偽物だとしても。  ルコが見た天使はきっと私だろう。ルコの鞄を背負っていたから、その鞄についた羽を見て、私を天使だと間違えたのだと思う。 「キリエは見つけた?」  ルコが期待に満ちた目を向けてきた。  私はゆっくりと首を振った。
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