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「オイオイ、嘘だろ」
先程まであった雑草屋敷を見上げながらライトは呟く。
確かに嘘だと思いたい光景が目の前に広がっていた。
「俺たちの時、試験ってこんな簡単に終わったっけ?」
「いや、早くても俺は二週間掛かった」
「一週間です」
「だよな」
フェア、お前は一体何者なんだ?
俺たちが立ち話をしていると大きく地面が揺れる。
なんだ?
不思議に思いソウに目配せすると、フェアの方を見て何か焦っていた。
俺も視線を戻すとそこには魔族の最上位クラスと思える力を持った大蛇がいた。
「フェア!!」
考えるより先に体が動く。
しまった。油断した。
此処は城壁の外、いくら魔物が現れないと言っても結界魔法は作用しない。
頼む間に合ってくれ。
俺が攻撃魔法を放つのとフェアが糸の切れた人形のように倒れるのは同時だった。
「おい、フェアを放せ」
「フェア?嗚呼、姫のことか。すまないがそれはできない」
俺たちは人質に取られたフェアを前に身動を取ることができない。
「それで~フェアちゃんを人質に取る理由は何?」
きっとこの中で一番怒らせてはいけないのはライトだろう。
今だって笑っているが目は笑っていない。
「お前等には関係ない。それとも何だ?お前達は姫の大切な存在なのか?」
「……」
「黙りか。どうせ姫の事など何一つ知らぬのだろう?なら、どうでも良い存在でしかない。」
「黙れ確かに俺たちは出会ったばっかりのただの他人だ。それでも、捨てられないように、呆れられないように必死に俺たちの顔を伺うフェアを見て、見捨てることなんてできるわけ無い!」
そうだ、俺は何に怯えている?相手が強いから?敵わないから?
違う。俺が一番怯えている理由はフェアを失うことだ。
「……そうか、ならば此処で消えてもらうまでだ」
戦闘状態に入った大蛇を前に、こちらも構えると
「やめなさいミズキ」
いつの間にか意識の戻ったのか、フェアが俺たちを背に庇われる。
その姿はまるで天から舞い降りた女神のようだった。
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