木曜日:ふゆ子、大体こんな感じ。

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木曜日:ふゆ子、大体こんな感じ。

木枯 冬子(こがらし とうこ)部長は、 みんなの憧れだ。 いつも堂々、顔をまっすぐ上げて 速くて完璧な仕事をこなす。 プレゼンもお手の物。 後輩の「ここが分からないんです…」という 相談を受けても 的確な言葉でスッキリ解決! そして何より、 残業をしない!! 山のような仕事を 驚きの集中力で片付けて、 キッカリ定時で帰宅するから 部下も家に帰れる! みんなは言う。 「トーコ先輩は、天使だ。 背中に翼が生えているに違いない!!」 そして今日も、 冬子は都内のマンションに帰る。 扉を開け、部屋の中に入り、 バタンと扉を閉める。 「ふゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆぅぅぅ~~……」 そのままうずくまり、 体が半分くらいの大きさになる。(ように見える)。 「私は天使なんかじゃ無いんだもぉん。 翼なんか生えてないもんぷしゅるるるぅぅ。 ぐすっ、ぐすっ…。 とりあえずビィル、ビィール飲むのぉぉ。」 5歳児のような口調で ビールを飲む 四十路の女。 これが『ふゆ子』。 色々終わっている弱気な女。 「そもそもぉ 会社とか行きたくない訳でぇ… ふぃっく! 定時で帰るのだって、 ホントは一刻も早く学…… 会社から逃げたいからでぇ 集団行動とかマジで無理なのぉ 死んじゃふゆゆゆゆゅゅゅ。。 プレゼンとか何年やっても 全く慣れないぅいっく! かまないで喋るのに必死でぇ 舞台俳優さんとかぁ、神だと思いマシュっ」 良い感じに出来上がってきている。 一人暮らしの部屋で。 「あ、そだ、これ。」 コンビニのレジ袋を開けると、 昔懐かし子ども向けプリン(3個入り)。 「これがいいんだもぉん。 お洒落プリンが食べたい日もあるんだけぇどぉ ど――しても これが食べたい日!ていうのがあるのぉんっ」 1個抜き取ると フタをはがして コンビニスプーンですくう。 「お…美味しい… 涙出る。 子どもの頃とおんなじ味だぁ。 よく考えたら… よぉく考えたらさ、 いくつになっても ずっと変わらず 私のそばで微笑んでくれる存在って あるんだなぁ… うえぇぇぇん。ありがたいぃぃ。」 ふゆ子には彼氏がいたことが無い。 「もぉ疲れたから このまんま寝ちゃおうかなぁ… 歯、磨かなきゃいけないんだよなぁ… 虫歯… でもめんどくさいし… なにより口の中がプリン味のままでいたいぃ…」 ふゆ子は誘惑に負けて寝オチした。
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