運命の一冊

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運命の一冊

「おい、探偵め。前回は大変な目にあわせてくれたな。今日はまた俺を呼び出して何する気だ」 「警部、お疲れさまです。前回のあの事件は、関係者が100人以上いました。私は、感心しました。あの人数を一堂に集められるのは警部だけです」 「え、そ、そうか?(テレ)」 「本当に、心底感謝しています。警部がいなければ、私は今まで探偵業を続ける事は出来なかったですから」 「お前……」 「尊敬しています」 「お、俺だって、お前の事、探偵として尊敬してるぜ。お前のお蔭で犯人を捕まえる事が出来たからな」 「そうですか? 嬉しいです」 「な、なんか照れるな」 「ふふ、照れてる警部も可愛いですよ」 「可愛いって、おまぁ(デレデレ)」 「そんな警部にお勧めしたい一冊がこれです!(ズバッ!)」 「(ビクッ!)え、ちょ、ちょっと待て。今、スーツの内ポケットから出したよな。入ってたか? そんなデカい本、入ってたか?」 「ふふ、警部。小さい事は気にしない」 「いや、気にするだろ。めちゃ表紙が凝ってんな」 「こりこりに凝りました」 「え、自費出版?」 「勿論ですよ! 大人気、科捜研探偵シリーズの第3弾! 『科捜研探偵は相棒がお好き』税込み19,800円! 今ならお友達価格で半額以下の1,980円です!」 「安! てか、タイトルを含めて色々気になったけど……これ自分で書いたのか?」 「勿論です! これも警部のお蔭です!」 「お前なあ、俺をヨイショすれば買うとでも」 「この前も、警部の部下の方が言ってました。俺も早く警部みたいなカッコいい刑事になりたいって」 「え、まじで?」 「上司の方も言っていました。警部になら信頼して任せられるって」 「ほんとか……。あの人には、いつも嫌味しか言われないんだが……」 「きっと、照れ隠しですよ。人間、本当に大切な事は、なかなか言えないものです」 「まあ、確かにな……」 「奥さんに愛してるって、毎日言ってますか?」 「い、言えるわけねえだろ、そんな恥ずかしい事」 「ほら」 「あ」 「照れ隠しです」 「そうだな……。ん、何の話だったっけ?」 「19,800円です」 「買うぜ!」 「毎度あり!」 ー続くー
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