立つ鳥跡を濁さず  side 藤嶋翔琉

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恋に溺れた天才の執着心は犯罪を引き起こす。 『真凛の居場所は胸の谷間に埋め込んだチップがあるからどこにいてもわかる。追跡ドローンカメラを開発して監視してる』 天宮の日常を常に垣間見ている結城に俺は何も言わずにいる。 小学生時代からの友人なのもあり、言っても無駄な事はわかりきっている。 それに、結城の気分を害させたら何されるかわからない恐怖もある。 天宮を虐めた子らは全員、解雇という体裁を受けた。 SNS上にとんでもない画像をUPされ、社会的抹殺された子もいた。 まさかここまで好きになった女に執着するとは思ってもいなかった。 大学のゼミでサポートしてくれた後輩が結城の意中の人になるとは思ってはいなかった。 「佐倉さんと連絡がとれなくなって真凛が泣いてる」  「えっ、仲が良かったのに、天宮に連絡先を伝えてないのか!!」 夜逃げしたかのように居なくなった佐倉さん。 何度も足を運んだマンションは夜中のうちに引き払われていて、彼女がどこにいるかも分からない。 プライベートスマホは電話番号が変更され、LINEも通じなくなった。 天宮と連絡を取り合うだろうから、結城に居場所を突き止められ、いつか再会できると思っていた。 「藤島、残念だな。佐倉さんの足取りが一切わからなくなった。引越し会社にハッキングしたら引越し先わかるかもしれないけど?」 「……やるかよ」 結城は俺に犯罪の片棒を担がせたいらしい。
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