屋烏之愛

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「やっと起きたわ! 心配したのよ? (みなと)ったら、帰ってきたって連絡してくれたのに、全然家に来なくって!! 心配して探したら、森の中で眠っているんだもの!! 年の為、病院に連れて検査して貰ったんだけど何ともなくて。でも湊ったら、3日も眠っていたのよ??」  母さんに説明されるが、帰ってきた覚えもないし、森の中に入った記憶もない。ここに来たという記憶がないのに、何でここに来たのかすらもわからないのに、何故か涙がこぼれた。突然泣く僕に驚いて、母さんはナースコールを押した。  何故帰ってきたのか、何故突然泣いているのか、何故一部分の記憶がないのか、僕にはさっぱり分からない。ただ、悲しいということだけは分かった。誰か分からないが、誰かの温もりが恋しい。頭を撫でてくれた知らない誰かの温もりが恋しい。それだけ思った。泣くのをやめようとするが、壊れた機械のように涙が溢れ出す。止められなかった。ただひたすらに泣いた。目が赤くなるほどに。ただ、アイツに会いたい。アイツの温もりを感じたい。アイツと、話したい。だけど、そのアイツが誰か分からなかった。
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