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解せぬ想い
堕天使ルシファーは、深いため息をつく。
意地悪で気紛れな彼が、らしくもない仕草を見せている。
ルシファーは針葉樹の大木の枝に座り、地上を見下ろしているが、そこには自分には縁のなくなった教会がある。
教会にはまだ天使になったばかりの少年がいた。
金色の髪に透き通るような緑色を帯びた青い瞳。
少年天使は迷える魂を天国へ導いてる最中だった。
ルシファーは美しい少年が純白の翼で空へ舞う姿に見とれた。
天使は迷える魂を天国へ導くのが仕事だ。
魂を天空へ連れて来ると、美しい少年は静かに微笑んでその場を立ち去った。
魂は天国へと続く道へ案内され、眩い光に惹かれてゆっくりと歩み始める。
少年天使が居なくなると、ルシファーは鋭い目つきで魂を睨みつけた。
漆黒の翼を音もなく広げ、広げたと同時に魂の側へ行って魂を捕らえる。
魂は突然の出来事に驚いて藻掻いたが、黒い翼を持つ元大天使は、その強大な力を使って魂を地獄へ放り投げた。
「……GOOD LUCK」
ニッと笑って闇に呑まれる魂を見送ったら、すぐさま少年天使の軌跡を辿って追いかける。
ルシファーには罪悪感などカケラもない。
ただ、少年天使を見つけて安堵した。
悪魔としてこれ以上ない程の力を持つ堕天使は、また大木の枝にとまって清らかな少年を見下ろしていた。
ルシファー自身何故なのかわからなかったが、純白の翼を持つ美しい少年を見つめずにはいられなかった。
魂を地獄へ落とすのは、そのついでにやっている事だ。
ルシファーは枝に座り直し、幹に寄りかかって片膝を立て、少年の透き通った瞳を見ては、深く長いため息をつくのだった。
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