Poltergeist für dich

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 そこに現れたのが、真白だった。        ◇ 「ふう」  ヤンキーたちの折り重なって倒れた身体の上にどかりと腰掛け、にかりと笑う。 「なあ。霊媒体質って、ほんとなのか?」  人なつこい表情のなかで、よく見ると瞳はぜんぜん、笑っていない。  ほうっておくと、じきに人間をやめてしまいそうな、……そんな、異形とも称せられる眼光をはなつ、瞳。 「ちょうどよかったあ。ねえ、苺。僕のラバーにならね?」 「……は?」  山から降りてき、じっ、と至近距離に顔を寄せて、苺を見つめる。 「僕、飽き飽きしてたんだ。中学でも高校でも、ケンカに明け暮れる日々に。ついには無敵の人、とか呼ばれて、遠く離れたとこに進学してきても、弟子志願のやつがついてくる始末だよ。おかげで、この進学校が、いまではヤンキーどもの巣窟(そうくつ)になっちまった」  おかげで、したかった心理学の勉強も、こんなとこじゃ落ち着いてできそうにない――。  ため息をつき、でも、と、苺の頬を撫でる。「元の、その本来の目的は、達成できそうだな。よかった、よかった」 「え。……」  唇がほんの一瞬、あたたかくなる。 「あは。イチゴ味じゃないんだな、さすがに」  顔真っ赤だぞ、とからかわれる。 「僕はね。試したいんだ。無敵の人と呼ばれる僕が、ほんとうに、無敵なのか」  僕は正直、自分のことを、そこまで強いと思ってない。  特に冗談めかしもせずに、耳を疑うことを口にする。 「手始めに、死に、抗えるか。試してみようと思うんだ」 「……は?」  訊き返す。 「え、なんて?」 「あ、もちろん、自分から死にに行くような愚かなことはしない。ただ、さすがに、そのまま死んじゃったら怖いから、保険をかけときたいの」 「保険?」 「そ」  短く答え、るん、と、よくわからない鼻歌を、ひとくさり口ずさむ。 「……愛するひとがいたら無敵だ、って、よく言うだろ。だから」  手ごろなのがいて、ちょうどよかったや。 「暴論すぎるだろ」  つぶやいて、苺は思わず、ふは、と笑った。 「めちゃくちゃだよ……」 「よく言われるよ」  つまらなさそうに、鼻を鳴らす。 「でも、死なないでくれな。助けてくれた恩人なんだから、悲しいや」  続けられた苺の言葉に、真白の呼吸が止まる。 「……やっべえな、あんた」  胸を押さえる。 「そんなこと、初めて言われたよ。ひさしぶりにすっげえ、どきどきした」  なあ。  幾分かやわらいだ光が、苺に向けられる。 「守らせてくれるかい。僕の、挑戦のために」 「おう。こんなオレでも、よければ」
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