一章

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「なんてきれい。あ、そうだ」  一緒に添えられている封筒を開封し、中から折りたたんである紙を取りだす。そこにはやはり、見慣れた美しい字が並んでいた。  誕生日の祝いの言葉とともに、月夜に似合う髪飾りを探したことが書かれてある。  そして、もうすぐ会えるだろうことも書かれてあった。  月夜は目を輝かせながら手紙の内容を何度も読み返した。さらには、文字をひとつずつじっくり眺めて喜びを噛みしめる。  そして、ふと思った。 〈からす〉は月夜の顔を知っているのだろうか。  月夜に似合う髪飾りということは、その容姿を知らなければできないことだ。しかし、月夜は家族と使用人以外の人間に会ったことがない。  いや、そんなことよりも、もっと気になることがある。 「もうすぐ……」  会えると書いてある。 〈からす〉に会えるのだ。  月夜にとってこれほどない希望だった。 「あなたはどんな人なの?」  月夜は〈からす〉を思い、手紙を胸に当てて目を閉じる。  手紙の文面でしか知らないが、きっと明るい人だろうと思う。優しくて笑顔が素敵な人。そんな印象を勝手に(いだ)く。  月夜は金赤の髪飾りを手に取り、鏡の前で身につけてみる。白髪には映えて見えるが、粗末な着物には似合わない。  けれど、うれしかった。
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